特集 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

気候変動の考え方・方針

野村不動産グループは、土地やその他の天然資源、エネルギーを利用して事業活動を行っており、気候変動は当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす重要な経営課題であると認識しています。

気候変動による自然災害の発生や環境規制の強化は、事業の継続を困難にし、資材調達・建築費用の増加につながるだけでなく、電気代や保険料などの運用コストも増大させる可能性があり、社会全体に大きな影響を及ぼします。一方で、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)など低炭素・脱炭素型の商品・サービスは新たな事業機会につながります。

当社グループは、このような認識のもと、ステークホルダーの皆さまと協働し、サプライチェーン全体で、エネルギー消費量・CO2 排出量の削減や再生可能エネルギーの活用を進めていきます。

気候変動への認識

気候変動は、現時点で「持続可能な社会の発展」を脅かす最も影響の大きいリスクの一つとして世界全体で認識されています。2013 年~2014 年に公表された IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書では、人間の活動が及ぼす温暖化・気候変動への影響についての評価として「可能性が極めて高い」(95%以上)と記載されています。その後、2021 年 8 月に公表された IPCC の第6次報告書において、気候変動・温暖化の主因が人間の活動であることは「疑う余地がない」と記載されています。

こういった科学的見解を踏まえ、社会全体・世界各国において気候変動に関する対応が議論されています。2015 年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、「世界の平均気温の上昇について、産業革命以前と比べ、2℃より十分に低く保ちつつ、1.5℃までに抑える」努力を追求する「パリ協定」が採択されました。このパリ協定に基づき、各国政府が温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下 GHG)の削減目標を立案するとともに、様々な気候変動に関する施策を展開しています。例えば、当社グループが主に事業を営む日本においては、2020 年10 月に「2050 年にカーボンニュートラルを目指す」旨の宣言が政府より公表されています。

気候変動が世界経済・企業への活動に与える影響は年々大きくなってきています。このため、株主・投資家の皆様においては「各企業の事業・計画は、気候変動よりどのような影響を受けるのか」を判断するニーズが年々高まってきています。このため、各企業の気候変動のリスク・機会を適切に評価できるような世界共通のフレームワークの必要性が認識され、G20 および各国中央銀行からの要請に応える形で、気候変動への対応に関する情報開示を促すために TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース、Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が設置されました。TCFD は、2017 年 6 月に最終報告書を公表し、各企業に対し気候変動に関する情報開示を推進しています。

このような環境下において、社会課題・環境問題の解決に向き合うことは当社の持続的成長に不可欠であると認識しています。2019 年 4 月に発表した当社の中長期経営計画で掲げている「④つの価値創造のテーマ」の一つとして「地球環境・地域社会の未来を見据えた街づくりとコミュニティ形成」を明記しています。

中長期経営企画

当社グループは、サステナビリティ活動の推進にあたり「環境・気候変動」を経営上の重要課題ととらえております。また、当社グループのサステナビリティ推進体系として「安心・安全」「環境」「コミュニティ」「健康・快適」の4つを重点テーマ(2021年度まで)として定め、そのうち「環境」においては「気候変動への対応」を重点項目の一つとして位置付けています。

ガバナンス

気候変動関連のグループ全体の方針・目標等については、野村不動産ホールディングスおよびグループ会社の役員などで構成される「サステナビリティ委員会」(委員長:野村不動産ホールディングス代表取締役社長 兼 グループCEO)で審議しています。同委員会は、経営会議の下部の会議体と位置付けられ、毎年 3~4 回以上開催されています。同委員会の中で、気候変動に関するリスク・機会の検討、グループ GHG 削減目標等の検討およびモニタリング等を行っています。サステナビリティ委員会の審議内容については、年2回以上、取締役会ならびに経営会議に報告されます。併せて、グループ経営において重要な事項がある場合は、都度、取締役会・経営会議に報告しています。

上述した通り、当社グループでは、野村不動産ホールディングス代表取締役 兼 グループ CEO が責任者となり、グループ全体でサステナビリティ・気候変動への対応を進めています。グループ CEO は、取締役会・経営会議における執行側の最高責任者であり、サステナビリティや気候変動課題への対応を含む、当社グループの企業としての持続的な成長を実現するために最善の意思決定を下し、関連する重要な業務を執行する責任を負います。

サステナビリティマネジメント体制

上記に加え、当社はリスク管理体制のなかでも気候変動に関するリスクを管理しています。

リスク
カテゴリー
定義
(A) 投資リスク 個別の投資(不動産投資・戦略投資(M&A)等)に関するリスク
(B) 外部リスク 事業に影響を及ぼす外的要因に関するリスク
(C) 災害リスク 顧客及び事業継続等に大きな影響を与える災害に起因するリスク
(D) 内部リスク 当社及びグループ各社で発生するオペレーショナルなリスク

当社グループでは、グループ経営に関する様々なリスクの審議を行うため、経営会議をリスクの統合管理主体として定め、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価及び分析を行い、各部門及びグループ各社に対して必要な指導及び助言を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告を行う体制としています。「A:投資リスク」、「B:外部リスク」については、統合管理主体である経営会議が直接モニタリング等を行い、「C:災害リスク」及び「D:内部リスク」については、経営会議の下部組織として設置している「リスクマネジメント委員会」が定期的なモニタリング、評価及び分析を行うとともに、発生前の予防、発生時対応、発生後の再発防止等についての対応策の基本方針を審議しております。気候変動に関するリスクについては、「事業の前提となる社会構造の変化・イノベーションに遅れることによるリスク(リスクカテゴリーB:外部リスク) 」、および「顧客及び事業継続に大きな影響を与える災害(地震・台風・洪水・津波・噴火・大火災・感染症の流行等)に起因するリスク(リスクカテゴリーC:災害リスク)」に位置付けており、リスクの一つとして管理しています。

リスクマネジメント体制

各事業部門においても、気候変動に関する社会動向(顧客・市場の変化、規制の変化等)を注視しており、気候関連課題のリスク・機会を特定し、事業・ビジネス・商品レベルでの関連施策を検討・実行しています。例えば、マーケット・顧客ニーズの変化、技術動向等を踏まえ、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の企画等を行っています。これら各事業部門による取り組みのうち、特に経営上重要と判断されるものについては、案件に応じ、サステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会・経営会議・取締役会に都度報告されています。

なお、当社グループでは、2019 年度より、CEO を含む役員の選任要件として、社会の変化や時代の要請への適合と高い意識を有することを求めており、役員報酬の決定においても気候変動を含む、サステナビリティ・ESG に関する要件を取り入れています。当社グループの役員報酬制度では、各役員が所管するビジネス領域における、気候変動への対応を含むサステナビリティに関する目標達成度を評価基準に組み入れており、役員は与えられたサステナビリティ・ESG に関する役割について、その達成度に応じた変動報酬が算出される制度になっています。

役員報酬制度

戦略

当社グループは、気候変動の戦略を検討するにあたり、IPCC 第 5 次評価報告書*およびパリ協定における合意内容等を踏まえ、シナリオを用いた定性的な分析を行いました。気候変動が当社グループにとってどのようなリスク・機会をもたらしうるかを検討し、それらのリスク・機会をとらえる戦略と施策を検討・実施しています。

注 2021 年 8 月発表の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書」も来年度以降の分析に活用予定です。

分析の範囲

当社グループは、住宅部門(マンション・戸建住宅の開発・分譲等)、都市開発部門(オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテルの開発・賃貸・販売等)、資産運用部門(REIT・私募ファンドの運用等)、仲介・CRE 部門(不動産の仲介等)、運営管理部門(不動産の管理等)、その他(海外等)より構成されますが、グループ全事業を分析の対象範囲としています。
なお、GHG 排出量の算定範囲として、当社グループのスコープ1・2・3全てを対象としています。

シナリオの設定

シナリオ分析においては、パリ協定の達成および脱炭素社会の実現を念頭に置き、「2℃シナリオ」を採用しました。また、本分析においては、気候変動対策が十分に進展せずその結果として自然災害が激甚化するケースとして「4℃シナリオ」も検討しています。それぞれのシナリオにおける世界像構築にあたっては以下の文献等を参考にしています。また、1.5℃シナリオについても別途検討を進めています。

  • ・国連 IPCC 第 5 次評価報告書(2014 年)「代表濃度経路(RCP)2.6」「代表濃度経路(RCP)8.5」
  • ・IEA World Energy Outlook(2020 年)「持続可能な開発シナリオ(SDS)」「すでに公表済みの政策によるシナリオ(STEPS)」

各シナリオにおいて想定される世界像

各シナリオで想定される変化を元に、2℃シナリオ、4℃シナリオにおける 2050 年における世界像を設定しています。(1.5℃シナリオについても、別途検討を進めています。)

項目 2℃シナリオ 4℃シナリオ
海面水位 0.3~0.5m の上昇
0.4~0.8m の上昇
台風 増加(日本)
大きく増加(日本)
洪水 増加(日本:約 2 倍)
大きく増加(日本:約 4 倍)
真夏日 増加(日本:約 10 日増)
大きく増加(日本:約 50 日増)
法規制 極めて厳格な規制の強化が進行
規制の動きは限定的
技術 脱炭素技術、ZEH・ZEB、再エネの普及が進む
脱炭素技術、ZEH・ZEB、再エネの普及が進まない
顧客 ZEH・ZEB、再エネ等の普及が進む
オフィスにおける消費エネルギー約 50%削減
ZEH・ZEB、再エネ等の普及は限定的
オフィスにおける消費エネルギー約 20%削減

リスク(および機会)の特定

TCFD 提言では、気候変動リスクを移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク、評判リスク)・物理的リスク(急性、慢性)に分類しています。当社グループは、この分類に従い、各リスク項目について、当社グループへの影響を特定しています。本項目では、各リスク項目において主な影響を記載します。

分類 当社グループへの影響 当社の認識
移行
リスク
政策・法規制リスク
事業単位、物件単位(スコープ1・2)での GHG 削減規制等の施行・強化
想定される事例
  • ・日本および海外における規制強化(省エネ法、東京都・環境確保条例、排出権取引制度、炭素税等)
  • ・補助金制度の拡充(省エネ技術、ZEH・ZEB 等)
リスク
機会
市場リスク
建物(ビル、住宅等)のエネルギー効率向上や脱炭素技術の開発・導入の遅れ
想定される事例
  • ・不動産の開発コストの増加
  • ・脱炭素技術や省エネ設備の投資
  • ・再生可能エネルギーの導入
リスク
機会
評判リスク
顧客の環境・省エネルギー・防災に関する機能の要求の高まり
想定される事例
  • ・顧客(ビル等の入居テナント、住宅の購入者、REIT 等)のニーズ変化
  • ・ZEH、ZEB に対する顧客評価の高まり
  • ・当社が保有する不動産の鑑定評価への影響
リスク
機会
技術リスク
投資家・消費者等から、当社グループの取組・事業が評価されないリスク
想定される事例
  • ・当社の事業・商品等に対する信頼性・ブランド価値の変化
  • ・株主、投資家、金融機関等の評価による資金調達への影響
リスク
機会
物理的
リスク
急性物理的リスク
台風、洪水、集中豪雨等の災害発生に伴う損失の発生
想定される事例
  • ・災害の発生に伴う当社保有建物の破損・機能停止
  • ・災害の発生に伴い、当社が開発中の不動産に関する工事の中断・遅延
リスク
慢性物理的リスク
平均気温の上昇に伴う、事業等への影響
海水面の上昇の顕在化に伴う、不動産の鑑定評価への影響
想定される事例
  • ・真夏日の増加に伴う、顧客・従業員・取引先等への健康影響
  • ・沿岸部等における不動産価値の毀損
リスク

リスク管理

リスク管理を含めた気候変動に関する事項は、取締役会・経営会議が監督するとともに、下部組織であるサステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会で都度審議しています。また、事業に関する個別事項(ビジネス企画・商品企画等)については各事業部門で管理しています。

サステナビリティ委員会は、気候変動関連のグループ全体の方針・目標等について審議を行い、グループ全体の気候変動リスク(および機会)を審議しています。

上記に加え、当社グループのリスク管理体制のなかでも、気候変動に関するリスクを管理しています。当社グループでは、グループ経営に関するリスクの審議を行うため、経営会議をリスクの統合管理主体として定め、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング・評価・分析を行い、その内容を取締役会に報告を行う体制としています。

各事業部門においても、マーケット(顧客企業、消費者)や法規制(建築、不動産等)に関するリスクを個々に調査・把握し、事業・商品等の企画に都度反映させています。各事業部門で検討された事項のうち当社グループ全体に影響が大きい事項については、内容に応じて、取締役会・経営会議・サステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会に適宜報告されています。

サステナビリティマネジメント体制

リスクマネジメント体制

指標と目標

当社グループでは、気候変動への対応を進めるために、以下の 3 つの目標を掲げており、温室効果ガスについても以下記載の指標を設定しています。

  • 温室効果ガス(GHG・CO2)削減

    【中長期目標】 ※2020 年 11 月 SBT(Science Based Targets)認定取得済
    グループ全体のScope1・2 および Scope3(カテゴリー1・11)の GHG 排出量(総量)について、
    2019 年度比、2030 年までに 35%削減

    【短期目標】
    グループ全体のScope1・2および3(カテゴリ1・11)の排出量を、総量で2019年度比、2025年までに15%削減する。

    Scope1:燃料の燃焼などの直接排出量、 Scope2:自社で購入した電気・熱の使用に伴う間接排出、 Scope3:Scope1・2以外の間接排出量

    Scope3の目標は、カテゴリー1(購入した製品・サービス)およびカテゴリー11(販売した商品の使用時)を対象としています。1カテゴリーのGHG排出量は、Scope3全体の約94%をカバーしています。(2019年度)

    【中長期目標】
    グループ全体のScope1・2の消費電力を、2050年までに100%再生可能エネルギー由来の電力とする。
    (2022年1月RE100加盟済)

    【短期目標】
    野村不動産が保有する国内全ての賃貸資産の消費電力を、2023年度迄に100%再エネにする。

    野村不動産が電力会社と直接電力契約を実施する賃貸資産(テナント使用分含む)、野村不動産が他者と区分・共有して保有する資産、売却・解体対象資産および一部賃貸住宅の共用部は除く。

  • エネルギー使用量の削減

当社グループは、原則、グループ全体で保有・販売する物件全てについて、GHG(CO2)排出量に関するデータを収集し、その実績集計およびモニタリングを行うことによって、グループ全体の GHG 排出量の削減を行い、気候変動への対応を進めます。また、将来的には 2050 年カーボンニュートラル実現を視野に入れた超長期的目標の設定も検討します。当社グループの気候変動に関する実績については、下記をご参照ください。

中長期目標(2030 年目標)の実績

(単位:t-CO2)
  2019 年度
(基準年)
2020 年度
  削減率
(2019 年度比)
Scope1 23,627 20,119 - 14.8%
Scope2 126,960 112,087 - 11.7%
Scope1・2合計 150,588 132,206 - 12.2%
1:購入した製品・サービス 969,704 453,707 - 53.2%
11:販売した製品の使用 2,203,005 834,184 - 62.1%
Scope3 合計 注)目標対象のみ 3,172,709 1,287,891 -59.4%

第三者保証

当社グループは、グループ全体の GHG 排出量・エネルギー使用量のデータについて、ロイドレジスタークオリティアシュアランスリミテッドより第三者保証を取得しています。

独立保証声明書

【参考】その他の気候変動に関する実績

1)スコープ 1・2の GHG 排出量実績

(単位:t-CO2)
  2018 年度 2019 年度
(基準年)
2020 年度
Scope1 24,018 23,627 20,119
Scope2 136,569 126,960 112,087
Scope1・2合計 160,586 150,588 132,206

2)スコープ3 全項目別の GHG 排出量実績

(単位:t-CO2)
  2019 年度
(基準年)
2020 年度
  削減率(2019 年度比)
1:購入した製品・サービス 969,704 453,707 - 53.2%
2:資本財 71,164 97,862 + 37.5%
3:Scope1,2 に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 27,473 24,854 - 9.5%
4:輸送、配送(上流) 4,081 3,164 - 22.4%
5:事業から出る廃棄物 6,858 5,317 - 22.4%
6:出張 1,421 936 - 34.1%
7:雇用者の通勤 2,395 2,409 + 0.5%
8:リース資産(上流)
9:輸送、配送(下流)
10:販売した製品の加工
11:販売した製品の使用 2,203,005 834,184 - 62.1%
12:販売した製品の廃棄 62,603 19,605 - 68.6%
13:リース資産(下流) 19,011 14,025 - 26.2%
14:フランチャイズ
15:投資
Scope3 総合計 3,367,714 1,456,063 - 56.7%

3)省エネ法届出物件におけるエネルギー使用量実績

  2018 年度 2019 年度 2020 年度
エネルギー使用量(MWh/年) 445,772 422,490 381,817
原単位排出量(MWh/㎡・年) 0.224 0.208 0.184

原単位においては、省エネ法届け出物件(省エネ届け出物件)の延床面積で除して算出しています。

4)太陽光発電事業の実施

当社グループは、太陽光発電事業を実施しています。物流施設「ランドポート」において、2021 年 3 月末現在、累計 18 棟に太陽光パネルを設置し、2020 年度の総発電量は 21,926 千 kWh/年です。

  2018 年度 2019 年度 2020 年度
物流施設「ランドポート」太陽光発電設置率(%) 92.9% 94.7% 90.0%
物流施設「ランドポート」太陽光発電量(千 kWh/年) 12,081 15,194 21,926

6)ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の取組み

当社グループは、総合的な環境負荷低減の観点から、分譲マンションにおけるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の開発に取り組んでいます。
2020年度は、経済産業省『超高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業』に「プラウドタワー亀戸クロス ゲートタワー」が、さらに、環境省「高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に「(仮称)神楽坂袋町計画」および「(仮称)武蔵浦和駅前計画」が採択されました。

ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅

ZEHマンションに向けた取り組み

環境性能と健康・快適を両立する「床快 full(ゆかいふる)」

プラウド高田馬場およびプラウドタワー亀戸クロスにおける概念図

ZEH-M の省エネ性能を実現するため、プラウド高田馬場、プラウドタワー亀戸クロスなどでは「床快 full(ゆかいふる)」を採用しています。「床快 full(ゆかいふる)」は、二重床を冷暖房と換気の経路に利用して住戸全体にエアコンの風と新鮮な外気を送ることで、24時間 365 日、住戸全体を快適に保ち、ヒートショックや熱中症のリスクを軽減する等健康維持に寄与します。また、外出時には、通常より設定温度を緩和したモードでの運転を併用することで、省エネで快適性を維持し、エネルギー効率を高めた暮らしを実現します。

7)芝浦一丁目プロジェクトにおける取組み

芝浦一丁目プロジェクトとは、東京都港区におけるオフィス・商業・ホテル等の大規模複合施設の段階的な建替プロジェクトであり、国家戦略特区として認定を受けています。
同プロジェクトは、健康で快適なまちの創造をテーマに、次世代のテナントビルのあるべき姿と CO2 削減の両立に向けて、ウェルネスオフィスの実現、各種省エネ対策による ZEB Oriented の達成を図るとともに、将来的には再生可能エネルギー由来電力等の導入によって、カーボンニュートラルの実現を目指しています。この計画が評価され、同プロジェクトは国土交通省・令和3年度サステナブル建築物等先導事業(省 CO2先導型)に採択されています。

8)その他個別の取組み

8-1)グリーンビルディング認証取得に関する取組み

当社グループは、新築および保有する不動産においてグリーンビルディングに関する環境認証(DBJ Green Building※1、LEED※2、CASBEE※3、BELS※4 など)の取得を目指します。

【定量目標】 新規に開発する固定資産・収益不動産(賃貸住宅除く)のグリーンビルディング認証取得率 100%

DBJ Green Building
日本政策投資銀行が運営する認証制度。環境・社会への貢献がなされた不動産の普及を目的としている。

LEED
米国グリーンビルディング協会(USGBC)が開発・運用、環境に配慮した建物に与えられる認証システム。

CASBEE
建築物の環境性能を総合的に評価するシステム。一般財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)などによる認証制度と自治体独自の評価制度がある。

BELS
国土交通省が制定した建築物省エネルギー性能表示制度。建築物の省エネ性能を第三者評価機関が評価し認定。

8-2)商品企画・設計時の環境性能評価

当社グループは、「設計基準」「品質マニュアル」に基づき、気候変動に対応した商品・サービスを提供しています。分譲マンション「プラウド」では、断熱等性能等級 4(最高レベル)、ペアガラス(妻面エコガラス)・LED 照明等を標準仕様とし、「環境評価&チャレンジシート」「環境&商品計画シート」を活用し環境性能向上を目指しています。

断熱等性能等級:「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能表示制度で、「温熱環境」の分野の性能を表す等級

8-3)顧客への省エネサポート

当社グループは、建物の省 CO2 化を図るだけでなく、居住者やテナント企業の運営上の省エネルギー推進をサポートしています。具体的には、エネルギー使用量集計システムや「エネルギー使用量の見える化」を図るシステムの提供、「enecoQ(エネコック)」を活用した省エネルギーの実現、会員誌でのエコ情報の提供などを行っています。

8-4)フロン削減

当社グループは、気候変動およびオゾン層の破壊につながるフロンの利用量を削減するため、ノンフロン型の断熱材やノンフロン冷媒のエアコン等を使用することを「品質マニュアル」に定めています。また、施工時には、施工会社に「品質管理チェックシート」の提出を義務付け、ノンフロン材を使用していることを確認しています。

8-5)サステナブル・ファイナンスの取組み

投資家・金融機関等からのニーズに応え、グループ全体でサステナビリティ・気候変動に関する取組みを推進するため、サステナブル・ファイナンスの取組みを実施しています。

  • サステナビリティ・リンク・ローンの実施 (2021 年 7 月)

    野村不動産ホールディングスは、株式会社千葉銀行の協力のもとサステナビリティ・リンク・ローン(以下「SLL」)における「包括型 SLL フレームワーク」を制定し、本フレームワークに基づく調達の第一弾として、2021 年 7 月 30 日に地銀広域連携「TSUBASA アライアンス」参加 9 行からの資金調達を実施しています。
    SLL は、サスティナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下「SPTs」)等の個別要件の調整・合意が必要です。本フレームワークでは、SBT 認定済の 2030 年中長期目標(2019 年度対比 2030 年度 GHG 排出総量35%削減)を SPTs として設定し、2030 年までに目標達成することで金利優遇が受けられる仕組みです。
    同仕組の信頼性を担保するため、株式会社格付投資情報センターより、サステナビリティ・リンク・ローン原則への適合、及び設定した SPT の合理性について第三者評価を取得しています。

    ニュースリリース

  • サステナビリティボンドの発行 (2021 年 2 月)

    野村不動産ホールディングスは、環境・社会双方の課題解決に貢献する施策・プロジェクトに充当する資金の調達手段として、2021 年 2 月に「サステナビリティボンド」を 100 億円発行しています。
    本ボンドの発行に際し、「野村不動産グループ・サステナビリティボンド・フレームワーク」を策定し、本フレームワークにもとづき調達した資金については、環境・社会の課題解決に貢献する適格事業に充当しています。
    同仕組の信頼性を担保するため、第三者評価機関であるヴィジオアイリス(Vigeo Eiris)、株式会社日本格付研究所(JCR)、株式会社格付投資情報センター(R&I)より、国際資本市場協会(ICMA)のサステナビリティボンド・ガイドライン等の諸原則との適合性に対する第三者評価を取得しています。

    ニュースリリース① ニュースリリース②