考え方・方針
全体方針(社会)
全体方針のもと、野村不動産グループは「グループ倫理規程」第20条※において「役職員の人権の尊重」を定めているほか、従業員をはじめ、当社事業にかかわるすべての人々における人権を尊重して行動するにあたり、以下の人権に関する国際規範を支持・尊重するとともに、活動する国のそれぞれの人権に関する法や規制を遵守し、事業を行うことを目指しています。また「野村不動産グループ人権方針」に則り、人権尊重については、野村不動産ホールディングス代表取締役社長兼グループCEOが責任者となり、すべての事業活動に関する人権侵害を特定、予防、低減するとともに、全てのステークホルダーに対して当社人権方針への協力を求め、より一層の対話促進にも努めていきます。
「野村不動産グループ倫理規程」(第20条)
役職員の基本的人権を尊重し、人種、民族、年齢、宗教、信条、性別、国籍、社会的身分、障がいの有無、妊娠、出産、育児休業、介護休業、性的指向、性自認等を理由とする差別やハラスメントを一切行わないものとする。
支持・尊重する国際規範
「国際人権章典」(国際連合)
生存権・言論と表現の自由・労働権・教育を受ける権利、文化生活に参加する権利などすべての人にとって達成すべき共通の基準
「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」(国際労働機関(ILO))
労働における基本的権利(結社の自由および団体交渉権、強制労働の禁止、児童労働の実効的な廃止、雇用および職業における差別の排除)
「ビジネスと人権に関する指導原則」(国際連合)
「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」、「救済へのアクセス」の3つの柱から構成される、すべての国と企業に適用されるグローバル基準
「子どもの権利とビジネス原則」(UNICEF、国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレン)
子どもの人権を守るために企業がとるべき行動を示したガイドライン
マネジメント
マネジメント(社会)
サステナビリティ委員会の下部組織として、「人権分科会」(責任者:ダイバーシティ&インクルージョン推進担当役員)を設置しています。この分科会は、複数名のサステナビリティ委員、グループ人材開発部、グループ法務コンプライアンス部・サステナビリティ推進部のメンバーで構成し、適宜開催しています。2022年度は計4回開催し、人権デュー・デリジェンスの実施・苦情処理メカニズム構築に向けた課題整理など、グループ全体の人権の取り組みを推進しております。
目標・実績
目標・KPIと実績データ
項目 | 2030年 目標 |
単位 | 2022年度実績 |
---|---|---|---|
KPI人権デューデリジェンスの体制構築 | 年度毎に 目標設定 |
ー | ①社内:外国籍従業員の就労実態調査 ②社外:サプライヤーの技能実習生就労実態調査 ③海外事業における人権リスク評価の組込み ④グリーバンスメカニズム構築に向けた課題整理 |
KPI人権関連研修参加率 | 100 | % | ー |
2030 年までの重点課題(マテリアリティ)に関する計測指標(KPI)
その他実績データ
項目 | 単位 | 2019年度実績 | 2020年度実績 | 2021年度実績 | 2022年度実績 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
人権関連研修(グループ合同) | 新入社員 | 参加率 | % | 100 | ー※1 | 100 | 100 |
参加者数 | 人 | 248 | ー※1 | 280 | 263 | ||
新任マネジメント(基幹)職 | 参加率 | % | 100 | 100 | 100 | 100 | |
参加者数 | 人 | 170 | 135 | 149 | 168 | ||
キャリア入社 | 参加率 | % | 100 | 100 | 100 | 100 | |
参加者数 | 人 | 79 | 170 | 195 | 262 | ||
グループ役職員向けメール配信 | ー | 実施 | 実施 | 実施 | 実施 | ||
人権関連研修(個社単独:野村不動産ライフ&スポーツ)※2 | 参加率 | % | 100 | 98.9 | 91.4 | 91.6 | |
参加者数 | 人 | ー | ー | 585 | 588 |
新型コロナウイルス感染症対策のため中止。
参加率・参加者は2019、2020年度は正社員とアルバイトを対象とした数字となり、2021、2022年度は正社員を対象とした数字となります。なお、アルバイトを対象とした研修は継続して実施しております。
取り組み
人権に関するこれまでの取り組み
時期 | 取り組み内容 |
---|---|
2020年度 |
・人権に関する国際規範に則った活動を強化・推進していくために、人権分科会を発足し、人権方針の策定等を開始 ・主要サプライヤー10社を対象としたサステナビリティに関するモニタリング面談を実施 |
2021年度 |
・「野村不動産グループ人権方針」を策定・公表 ・当社グループにおける顕著な人権課題を特定 ・当社グループ内における人権課題の現状把握を目的にグループ全体のデスクトップ調査を実施 ・比較的人権リスクが高い事業として、施設運営・管理業、ホテル業、海外事業(当社グループの日本法人6社、ベトナム法人1社の計7社)に対してヒアリングおよびアンケートにて詳細調査を実施 4つの優先課題の特定①従業員のウェルネスと人権 |
人権デュー・デリジェンスの取り組み(4つの優先課題の取り組み)
当社グループの事業活動および取引関係により当社の事業、商品、サービスに直接関係する人権への負の影響を特定し、それらを防止および軽減させることを目的に、当社グループは国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく、人権デュー・デリジェンスのプロセスの構築に取り組んでいます。
外部専門家の協力のもと、2021年度までに人権デュー・デリジェンスにおいて優先的に取り組む課題の設定が完了し、3年間の取り組みロードマップを策定しました。具体的には「4つの優先課題」として①従業員のウェルネスと人権②海外事業・外国人労働者③サプライチェーン上の人権④救済措置を選定し、所管担当を定めています。
2022年度以降はロードマップに基づき本格的な人権デュー・デリジェンスおよびPDCAの展開を行っています。
人権デュー・デリジェンスの対象
対象事業 | 不動産開発事業、不動産運営事業(特に、ホテル事業における運営)、海外事業(ベトナム、タイ、中国、フィリピン) |
---|---|
対象者 |
当社グループ従業員(特に外国籍従業員) サプライヤーの従業員(特に外国人技能実習生) 顧客、近隣住民 |
人権リスク指標 |
①児童労働 ②強制労働および人身取引 ③あらゆる差別 ④ハラスメント ⑤適正な労働環境 ⑥適正な労働条件 ⑦顧客・利用客等の生命・健康 ⑧近隣住民等の生命・健康 ⑨用地取得の経緯 ⑩プライバシー |
人権デュー・デリジェンス(4つの優先課題)の進捗について
テーマ | 2022年度実績 | 2023年度予定 |
---|---|---|
①従業員のウェルネスと人権 |
・労働時間削減 ・有給休暇取得促進 |
・有給休暇取得の更なる促進 ・アブセンティーズム※1 プレゼンティーズムの低減※2 |
②海外事業・外国人労働者 |
・海外事業におけるプロジェクト評価に人権要素組み込み ・当社グループ外国籍従業員宛の実態調査と「人権チェックリスト」作成 |
・評価組込み後のモニタリング体制確立 ・「人権チェックリスト」の運用体制確立 |
③サプライチェーン上の人権 |
・技能実習生雇用状況ヒアリングシートの作成&サプライヤーへ配布 |
・ヒアリングシート回答内容を踏まえた直接エンゲージメント実施 |
④救済措置 |
・国際基準と当社現状体制の差異分析 |
・差異分析を踏まえた課題改善(外部団体への加盟可否含む) |
欠勤や休職、遅刻早退などにより、職場で業務を行うことができない状態
出勤しているものの、心身の健康上の問題により、充分な仕事ができない状態

自社グループの人権リスクの防止
人権に対する負の影響をより明確に把握するために、「4つの優先課題」の1つである「海外事業・外国人労働者」のテーマにおいて、2022年度は以下2つの人権リスクアセスメントを実施しております。
➀海外現地法人勤務の当該国以外の外国籍従業員が勤務する2社の実態調査(ベトナム・香港)
➁国内で外国籍従業員を雇用しているグループ企業4社に対してヒアリング調査
法人が所在する国以外の外国籍従業員が在籍する法人に対しては、100%調査を実施
特に➁については技能実習生や留学生を含む外国籍従業員に対して、当社グループ採用における違法な仲介業者の有無、雇用契約の内容、労務管理・安全衛生の状況について個別にヒアリング調査を実施し、国際規範や法令の違反がないことを確認しました。今後、このヒアリングの結果を踏まえ、新規に外国籍従業員を採用する際の人権リスク確認手順を確立していきます。
サプライチェーンにおける人権リスクのアセスメント
当社グループは、サプライチェーンにおける人権課題に対応する為、4,600社以上の取引先に「調達ガイドライン」を配布し、各社に対して人権の尊重を要請しています。
2021年度に行った調達ガイドラインのアンケートについて、2022年度は外国人技能実習性に関する項目を追加し、2021年度よりも対象範囲を拡大して、主要サプライヤー約300社に送付しました。回答があった154社(主要サプライヤーに占める割合:51%)のうち約10社(3%)へは、取り組み状況を確認の上で社内体制の整備・人権リスク低減施策の推進などの対応促進依頼を含んだ直接エンゲージメントを実施しております。
今後も対象を拡大し、サプライチェーンにおける人権課題に取り組んでいきます。
【人権リスク確認のために追加した主な項目】
・受け入れ時の仲介業者への斡旋料、保証金、渡航前費用の有無
・勤務時間の記録の有無
・賃金の記録
・給与からの控除
・寮、宿泊施設の条件や環境の確認
・パスポート、在留カードの本人保有の確認
グループ役職員への人権研修
階層別研修
当社グループは、人権の尊重に対する理解を深めるために、階層別研修などの機会を利用し、人権に関する教育を行っています。2021年度に実施した人権を取り扱った研修は上記の通りで、延べ2,408名(アルバイト含む)が参加しました。
また、「野村不動産グループ倫理規程ハンドブック」を従業員に配布し知識の周知を図るとともに、差別やハラスメントに関する研修を全従業員に対して実施しています。さらに、定期的に発行するグループ社内報では、LGBT※の方への理解と配慮を求める項目も記載しています。
LGBT:レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字をとったセクシュアルマイノリティの総称
人権課題に対する救済措置
苦情処理メカニズムの整備
当社グループは、雇用形態に関わらず、すべての従業員が利用できる人権問題の複数の相談窓口にくわえ、お取引先様から当社グループの従業員による人権侵害など倫理規程に抵触する恐れのある行為について通報いただく窓口を設置しています。
これらの相談窓口に通報・相談が寄せられた際には、匿名で通報を受け付けるとともに、秘密を厳守します。また、調査の結果、明らかに人権の尊重に対する違反行為がある事案に関しては、加害者に対し、しかるべき措置をとるとともに、被害者や、通報者が通報を理由に不利な取り扱いを受けないよう、保護しています。
このように、複数の相談窓口を設けることにより、相談しやすい環境を整え、問題の早期発見と解決、再発防止策に取り組んでいます。
相談窓口では、半期ごとにリスクマネジメント委員会、法令違反・不正に関するものはリスクマネジメント委員会に加えて監査等委員会に報告を行い、経営層が相談窓口の運用状況のモニタリングを行っています。
なお、2022年度の差別やハラスメントに関わるものとしてグループ窓口への相談件数は52件で、事実について調査を行い、適宜対応を行いました。
今後、相談窓口の実効性を向上させるために、体制面の強化等を図っていく予定です。
人権に関する相談窓口
窓口 | 対象者 | 概要 | |
---|---|---|---|
野村不動産グループ人権啓発デスク | 社内 | グループ役職員 | ハラスメントに関する相談受付窓口 |
パワハラ・セクハラほっとライン | 社外 | グループ役職員 | ハラスメントに関する相談受付窓口 |
野村不動産グループ・ヘルプライン | 社内 | グループ役職員 | 組織的または個人的な人権を含む法令違反行為、不正行為等に関する相談または通報受付窓口 |
海外ヘルプライン | 社内 (国内・ 海外) |
グループ海外現地法人に直接採用された役職員 | 組織的または個人的な人権を含む法令違反行為、不正行為等に関する相談または通報受付窓口 |
お取引先様専用ヘルプライン | 社内 | 全お取引先様(法人)の従業員 | 当社グループまたは当社グループ社員による人権を含むコンプライアンス違反またはそのおそれがある行為に関する通報受付窓口 |
人権課題に関するステークホルダーとのエンゲージメント
当社グループは、社内外でさまざまな形で人権をテーマとしたステークホルダーエンゲージメントを実施しています。
「人権デュー・デリジェンス推進協議会」への参加
当社グループは、サプライヤーであるゼネコン3社および不動産ディベロッパー5社(当社含む)の計8社による「人権デュー・デリジェンス推進協議会(旧:人権デュー・デリジェンス勉強会)」に参加しています。
当会は、「ビジネスと人権に関する指導原則」が企業に求める「他者の人権を侵害することを回避し、関与する人権への負の影響を防止・軽減・是正する措置を講じる」責任を果たすために発足されました。
業界全体で、強制労働をはじめとする人権侵害の予防に努めていきます。
人権課題に関する意見交換
当社グループは、建設・不動産会社が主体的に実施している「人権デュー・デリジェンス推進協議会(旧:人権デュー・デリジェンス勉強会)」にて、外国人技能実習生の受け入れや、事業活動に関わる人権課題に関して、人権への負の影響を防止するために、NGOや弁護士など社外とのエンゲージメントを実施しています。エンゲージメントでは、長時間労働や安全対策の払底などの問題が重要であると指摘を受けました。
エンゲージメントの結果を今後の活動や計画に反映することで、国際規範に基づいた適切な事業活動を推進しています。
外国人技能実習生の受け入れとコミュニケーション
当社グループの野村不動産アメニティサービスは、インドネシアとベトナムから外国人技能実習生を受け入れています。実習生たちが安心して仕事に取り組めるよう、労働環境の整備、安全基準の徹底に加え、適切な生活環境の提供などに配慮し、受け入れを行っています。受け入れた技能実習生に対しては、上長との定期的な面談の機会(ラインケア)に加え、人材開発課スタッフによる実習生寮巡回時に生活支援・メンタルケアなどのサポート体制を設け(スタッフケア)、実習生個々の意見・要望・相談・悩み事の吸い上げを行っています。また、技能実習生向けのイベントも実施し、相互の交流や日本文化に触れる機会なども提供しています。今後、受け入れのさらなる拡大を検討しており、技能実習生の人権に一層配慮した対応とコミュニケーションが不可欠と認識しています。

サステナビリティ
- 野村不動産グループのサステナビリティ
- 気候変動と自然環境
- 社会と社員
- ESGデータ集