特集 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

気候変動への認識

気候変動は、現時点で「持続可能な社会の発展」を脅かす最も影響の大きいリスクの一つとして世界全体で認識されています。2013年~2014年に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書では、人間の活動が及ぼす温暖化・気候変動への影響についての評価として「可能性が極めて高い」(95%以上)と記載されています。その後、2021年8月に公表されたIPCCの第6次報告書において、気候変動・温暖化の主因が人間の活動であることは「疑う余地がない」と記載されています。

こういった科学的見解を踏まえ、社会全体・世界各国において気候変動に関する対応が議論されています。2015 年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、「世界の平均気温の上昇について、産業革命以前と比べ、2℃より十分に低く保ちつつ、1.5℃までに抑える」努力を追求する「パリ協定」が採択されました。このパリ協定に基づき、各国政府が温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)の削減目標を立案するとともに、さまざまな気候変動に関する施策を展開しています。例えば、当社グループが主に事業を営む日本においては、2020年10月に「2050年にカーボンニュートラルを目指す」旨の宣言が政府より公表されています。

気候変動が世界経済・企業への活動に与える影響は年々大きくなってきています。このため、株主・投資家の皆さまにおいては「各企業の事業・計画は、気候変動よりどのような影響を受けるのか」を判断するニーズが年々高まってきています。このため、各企業の気候変動のリスク・機会を適切に評価できるような世界共通のフレームワークの必要性が認識され、G20および各国中央銀行からの要請に応える形で、気候変動への対応に関する情報開示を促すためにTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース、Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が設置されました。TCFDは、2017年6月に最終報告書を公表し、各企業に対し気候変動に関する情報開示を推進しています。

■当社グループの考え方・方針

このような環境を踏まえ、当社グループにおける2050年のありたい姿としてサステナビリティポリシー「Earth Prideー地球を、つなぐー」を策定いたしました。
これまで当社グループは、「私たちの約束」として「あしたを、つなぐ」というグループ企業理念のもと、不動産開発と不動産関連サービスの連携による事業活動を推進してまいりましたが、2050年という将来に向けて、企業活動の舞台である地球を“誇れる地球”として未来へつなげていくために、企業として果たしたい役割をこのサステナビリティポリシーに込めました。
この「Earth Prideー地球を、つなぐー」は、当社グループが大切にしたい「人間らしさ」、「自然との共生」、「共に創る未来」の3つのテーマをベースにしています。

このサステナビリティポリシーは、持続可能な社会と企業成長を実現する企業グループとして、2050年のありたい姿を言語化したものです。また、策定においては、当社グループの中堅・若手社員やマネジメント層および経営層、社外の機関投資家・金融機関、顧客、取引先や有識者など、数多くの方々から意見をいただきました。
2050年のサステナビリティポリシーを実現するために、2030年までに特に取り組むべき重点課題として、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「人権」、「脱炭素」、「生物多様性」、「サーキュラーデザイン」の5つを特定しています。

■目標

気候変動と自然環境 国際的な喫緊課題であるCO2排出量削減への貢献と、CO2削減に寄与する生物多様性保全、循環型社会の実現
  脱炭素 「省エネルギー」「事業の低炭素化」「再生可能エネルギー転換」への取り組み
<目標:2019年度比で2030年までにScope1,2,3で35%削減 >
生物多様性 国内の森林循環の回復を通し、多様な生物が生息できる都市緑化や森林保全によるCO2吸収や自然環境への貢献
サーキュラーデザイン 建物長寿命化、再資源化、シェアリングなどを取り入れた街づくりやサービスの提供を通じた脱炭素社会、循環型経済への貢献
社会と社員 組織や業態を超えた「共創」の為のサステナビリティの推進基盤の強化
  ダイバーシティ&
インクルージョン
女性や外国人をはじめとするさまざまなバックグラウンド・価値観を持つ多様な人材が最大限に能力発揮できる組織作り
人権 あらゆる社員、事業にかかわるすべての人々の尊厳と基本的人権が尊重しあえる企業としての基盤固め

■気候変動と自然環境

不動産開発と不動産関連サービスの連携により、街づくりや商品・サービスを通じて、世界共通のテーマである気候変動課題の解決に貢献するとともに、自然環境の保全にもつながる重点課題を特定いたしました。また、これまで当社グループは、SBT認定の取得(2019年度比 35%削減)、TCFDの賛同、RE100への加盟など、国際的なイニシアティブへの参加を進めてまいりました。

■脱炭素

当社グループ開発建物における「省エネ」、「低炭素化」、「再エネ」の推進によるCO2総排出量の削減

<主な取り組み>

ZEH/ZEB oriented 水準を確保した省エネルギー性能のさらなる向上を目指します。

建設会社や建材メーカーなどとの共創により、低炭素資材の利用促進に向けた研究開発に取り組みます。

当社グループが開発する建物(物流施設など)の屋根を活用した太陽光発電所の設置など、追加性のある再生可能エネルギー由来の発電の増加に貢献します。

芝浦一丁目プロジェクト(S棟:2024年度、N棟:2030年度竣工)において、カーボンニュートラルを実現するとともに、東京大学先端科学技術研究センターと次世代エネルギー交流施設を新設するなど、街づくりを通じて社会における気候変動への対応を目指します。

気候変動の考え方・方針

野村不動産グループは、土地やその他の天然資源、エネルギーを利用して事業活動を行っており、気候変動は当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす重要な経営課題であると認識しています。野村不動産ホールディングス株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 グループCEO 新井 聡)は、2020年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織「TCFDコンソーシアム」へ加入しています。

ガバナンス

気候変動関連のグループ全体の方針・目標等については、野村不動産ホールディングスおよびグループ会社の役員などで構成される「サステナビリティ委員会」(委員長:野村不動産ホールディングス代表取締役社長 兼 グループCEO)で審議しています。同委員会は、経営会議の下部の会議体と位置付けられ、毎年 3~4 回以上開催されています。同委員会の中で、気候変動に関するリスク・機会の検討、グループ GHG 削減目標等の検討およびモニタリング等を行っています。サステナビリティ委員会の審議内容については、年2回以上、取締役会ならびに経営会議に報告されます。併せて、グループ経営において重要な事項がある場合は、都度、取締役会・経営会議に報告しています。

上述した通り、当社グループでは、野村不動産ホールディングス代表取締役 兼 グループCEOが責任者となり、グループ全体でサステナビリティ・気候変動への対応を進めています。グループCEOは、取締役会・経営会議における執行側の最高責任者であり、サステナビリティや気候変動課題への対応を含む、当社グループの企業としての持続的な成長を実現するために最善の意思決定を下し、関連する重要な業務を執行する責任を負います。

サステナビリティマネジメント体制

取締役のスキルマトリクス

上記に加え、当社はリスク管理体制のなかでも気候変動に関するリスクを管理しています。

リスク
カテゴリ
定義
A 投資リスク 個別の投資(不動産投資・戦略投資(M&A)等)に関するリスク
B 外部リスク 事業に影響を及ぼす外的要因に関するリスク
C 災害リスク 顧客および事業継続等に大きな影響を与える災害に起因するリスク
D 内部リスク 当社およびグループ各社で発生するオペレーショナルなリスク

当社グループでは、グループ経営に関するさまざまなリスクの審議を行うため、経営会議をリスクの統合管理主体として定め、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価および分析を行い、各部門およびグループ各社に対して必要な指導および助言を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告を行う体制としています。「A:投資リスク」、「B:外部リスク」については、統合管理主体である経営会議が直接モニタリング等を行い、「C:災害リスク」および「D:内部リスク」については、経営会議の下部組織として設置している「リスクマネジメント委員会」が定期的なモニタリング、評価および分析を行うとともに、発生前の予防、発生時対応、発生後の再発防止等についての対応策の基本方針を審議しております。気候変動に関するリスクについては、「事業の前提となる社会構造の変化・イノベーションに遅れることによるリスク(リスクカテゴリB:外部リスク) 」、および「顧客および事業継続に大きな影響を与える災害(地震・台風・洪水・津波・噴火・大火災・感染症の流行等)に起因するリスク(リスクカテゴリC:災害リスク)」に位置付けており、リスクの一つとして管理しています。

リスクマネジメント体制

各事業部門においても、気候変動に関する社会動向(顧客・市場の変化、規制の変化等)を注視しており、気候関連課題のリスク・機会を特定し、事業・ビジネス・商品レベルでの関連施策を検討・実行しています。例えば、マーケット・顧客ニーズの変化、技術動向等を踏まえ、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の企画等を行っています。これら各事業部門による取り組みのうち、特に経営上重要と判断されるものについては、案件に応じ、サステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会・経営会議・取締役会に都度報告されています。

なお、当社グループでは、2019年度より、CEO を含む役員の選任要件として、社会の変化や時代の要請への適合と高い意識を有することを求めており、役員報酬の決定においても気候変動を含む、サステナビリティ・ESG に関する要件を取り入れています。当社グループの役員報酬制度では、各役員が所管するビジネス領域における、気候変動への対応を含むサステナビリティに関する目標達成度を評価基準に組み入れており、役員は与えられたサステナビリティ・ESG に関する役割について、その達成度に応じた変動報酬が算出される制度になっています。

また、2022年度より、監査等委員を除く取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針を改定のうえ、金銭報酬である賞与に係る業績指標等の内容、算定方法について、業績による評価を中心としつつ、非財務指標(サステナビリティ要素等)による評価も行うことにしました。これは取締役のサステナビリティに関する意識付けの向上を目的としたものであり、2022年度は当該非財務指標としてBEIを基準とする評価を行う予定です。

Building Energy - efficiency Indexの略。建築物エネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の省エネ基準に基づく、建築物の省エネルギー性能を評価する指標。建築物の一次エネルギー消費量の水準を示す。

役員報酬制度

戦略

当社グループは、気候変動の戦略を検討するにあたり、IPCC 第 5 次評価報告書およびパリ協定における合意内容等を踏まえ、シナリオを用いた定性的な分析を行いました。気候変動が当社グループにとってどのようなリスク・機会をもたらしうるかを検討し、それらのリスク・機会をとらえる戦略と施策を検討・実施しています。

2021 年 8 月発表の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書」も来年度以降の分析に活用予定です。

分析の範囲

当社グループは、住宅部門(マンション・戸建住宅の開発・分譲等)、都市開発部門(オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテルの開発・賃貸・販売等)、資産運用部門(REIT・私募ファンドの運用等)、仲介・CRE 部門(不動産の仲介等)、運営管理部門(不動産の管理等)、その他(海外等)より構成されますが、グループ全事業を分析の対象範囲としています。
なお、GHG 排出量の算定範囲として、当社グループのスコープ1・2・3すべてを対象としています。

シナリオの設定

シナリオ分析においては、パリ協定の達成および脱炭素社会の実現を念頭に置き、「2℃シナリオ」を採用しました。また、本分析においては、気候変動対策が十分に進展せずその結果として自然災害が激甚化するケースとして「4℃シナリオ」も検討しています。それぞれのシナリオにおける世界像構築にあたっては以下の文献等を参考にしています。また、1.5℃シナリオについても別途検討を進めています。

  • ・国連IPCC第5次評価報告書(2014 年)「代表濃度経路(RCP)2.6」「代表濃度経路(RCP)8.5」
  • ・国連IPCC第6次評価報告書(2021年)
  • ・IEA World Energy Outlook(2020年)「持続可能な開発シナリオ(SDS)」「すでに公表済みの政策によるシナリオ(STEPS)」

各シナリオにおいて想定される世界像

各シナリオで想定される変化を元に、2℃シナリオ、4℃シナリオにおける2050年の世界像を設定しています(1.5℃シナリオについても、別途検討を進めています)。

項目 2℃シナリオ 4℃シナリオ
海面水位 0.3~0.5m の上昇
0.4~0.8m の上昇
台風 増加(日本)
大きく増加(日本)
洪水 増加(日本:約 2 倍)
大きく増加(日本:約 4 倍)
真夏日 増加(日本:約 10 日増)
大きく増加(日本:約 50 日増)
法規制 極めて厳格な規制の強化が進行
規制の動きは限定的
技術 脱炭素技術、ZEH・ZEB、再エネの普及が進む
脱炭素技術、ZEH・ZEB、再エネの普及が進まない
顧客 ZEH・ZEB、再エネ等の普及が進む
オフィスにおける消費エネルギー約 50%削減
ZEH・ZEB、再エネ等の普及は限定的
オフィスにおける消費エネルギー約 20%削減

リスク(および機会)の特定

TCFD 提言では、気候変動リスクを移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク、評判リスク)・物理的リスク(急性、慢性)に分類しています。当社グループは、この分類に従い、各リスク項目について、当社グループへの影響を特定しています。本項目では、各リスク項目において主な影響を記載します。

 
分類 当社グループへの影響 当社の認識
リスク 機会
移行
リスク
政策・法規制リスク
事業単位、物件単位(スコープ1・2)での GHG 削減規制等の施行・強化
想定される事例
  • ・日本および海外における規制強化(省エネ法、東京都・環境確保条例、排出権取引制度、炭素税等)
  • ・補助金制度の拡充(省エネ技術、ZEH・ZEB 等)
市場リスク
建物(ビル、住宅等)のエネルギー効率向上や脱炭素技術の開発・導入の遅れ
想定される事例
  • ・不動産の開発コストの増加
  • ・脱炭素技術や省エネ設備の投資
  • ・再生可能エネルギーの導入
評判リスク
顧客の環境・省エネルギー・防災に関する機能の要求の高まり
想定される事例
  • ・顧客(ビル等の入居テナント、住宅の購入者、REIT 等)のニーズ変化
  • ・ZEH、ZEB に対する顧客評価の高まり
  • ・当社が保有する不動産の鑑定評価への影響
技術リスク
投資家・消費者等から、当社グループの取組・事業が評価されないリスク
想定される事例
  • ・当社の事業・商品等に対する信頼性・ブランド価値の変化
  • ・株主、投資家、金融機関等の評価による資金調達への影響
物理的
リスク
急性物理的リスク
台風、洪水、集中豪雨等の災害発生に伴う損失の発生
想定される事例
  • ・災害の発生に伴う当社保有建物の破損・機能停止
  • ・災害の発生に伴い、当社が開発中の不動産に関する工事の中断・遅延
慢性物理的リスク
平均気温の上昇に伴う、事業等への影響
海水面の上昇の顕在化に伴う、不動産の鑑定評価への影響
想定される事例
  • ・真夏日の増加に伴う、顧客・従業員・取引先等への健康影響
  • ・沿岸部等における不動産価値の毀損

また、上記の定性的な分析に加え、以下に記載するような定量的な分析も進めております。今後、定量的な開示をより強化していく予定です。

2030年までに想定する財務影響 定量的インパクト(最大値・累計額)
リスク 災害増に伴う損害保険料の増加 600万円
カーボンプライシング/炭素税導入 15億円
機会 CO2削減目標達成による資金調達コスト減 1.5億円
建物環境性能向上に伴うエネルギーコスト減少 9億円

リスク管理

リスク管理を含めた気候変動に関する事項は、取締役会・経営会議が監督するとともに、下部組織であるサステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会で都度審議しています。また、事業に関する個別事項(ビジネス企画・商品企画等)については各事業部門で管理しています。

サステナビリティ委員会は、気候変動関連のグループ全体の方針・目標等について審議を行い、グループ全体の気候変動リスク(および機会)を審議しています。

上記に加え、当社グループのリスク管理体制のなかでも、気候変動に関するリスクを管理しています。当社グループでは、グループ経営に関するリスクの審議を行うため、経営会議をリスクの統合管理主体として定め、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング・評価・分析を行い、その内容を取締役会に報告を行う体制としています。

各事業部門においても、マーケット(顧客企業、消費者)や法規制(建築、不動産等)に関するリスクを個々に調査・把握し、事業・商品等の企画に都度反映させています。各事業部門で検討された事項のうち当社グループ全体に影響が大きい事項については、内容に応じて、取締役会・経営会議・サステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会に適宜報告されています。

サステナビリティマネジメント体制

リスクマネジメント体制

指標と目標

当社グループでは、気候変動への対応を進めるために、以下の 3 つの目標を掲げており、温室効果ガスについても以下記載の指標を設定しています。

  • 温室効果ガス(GHG・CO2)削減

    【中長期目標】 ※2020 年 11 月 SBT(Science Based Targets)認定取得済
    グループ全体のScope1・2 および Scope3(カテゴリ1・11)の GHG 排出量(総量)について、
    2019 年度比、2030 年までに 35%削減

    【短期目標】
    グループ全体のScope1・2および3(カテゴリ1・11)の排出量を、総量で2019年度比、2025年までに15%削減する。

    Scope1:燃料の燃焼などの直接排出量、 Scope2:自社で購入した電気・熱の使用に伴う間接排出、 Scope3:Scope2以外の間接排出量

    Scope3の目標は、カテゴリ1(購入した製品・サービス)およびカテゴリ11(販売した商品の使用時)を対象としています。カテゴリ1・11のGHG排出量は、Scope3全体の約94%をカバーしています。(2019年度)

  • エネルギー使用量の削減
  • 【中長期目標】
    グループ全体の消費電力を、2050年までに100%再生可能エネルギー由来の電力とする。
    (2022年1月RE100加盟済)

    【短期目標】
    野村不動産が保有する国内すべての賃貸資産の消費電力を、2023年度迄に100%再エネにする。

    >野村不動産が電力会社と直接電力契約を実施する賃貸資産(テナント使用分含む)、野村不動産が他者と区分・共有して保有する資産、売却・解体対象資産および一部賃貸住宅の共用部は除く。

  • 太陽光発電の促進

当社グループは、原則、グループ全体で保有・販売する物件すべてについて、GHG(CO2)排出量に関するデータを収集し、その実績集計およびモニタリングを行うことによって、グループ全体の GHG 排出量の削減を行い、気候変動への対応を進めます。また、将来的には 2050 年カーボンニュートラル実現を視野に入れた超長期的目標の設定も検討します。当社グループの気候変動に関する実績については、下記をご参照ください。

中長期目標(2030年目標)の実績

(単位:t-CO2

  2019 年度
(基準年)
2020 年度 2021 年度
  削減率
(2019 年度比)
  削減率
(2019 年度比)
Scope1 23,627 20,119 - 14.8% 21,542 - 8.8%
Scope2 126,960 112,087 - 11.7% 107,514 - 15.3%
Scope1・2合計 150,588 132,206 - 12.2% 129,056 - 14.2%
1:購入した製品・サービス 969,704 453,707 - 53.2% 702,271 - 27.5%
11:販売した製品の使用 2,203,005 834,184 - 62.1% 1,214,723 - 44.8%
Scope3 合計 注)目標対象のみ 3,172,709 1,287,891 - 59.4% 1,916,994 - 39.6%

第三者保証

当社グループは、グループ全体の GHG 排出量・エネルギー使用量のデータについて、ロイドレジスタークオリティアシュアランスリミテッドより第三者保証を取得しています。

LRQA独立保証声明書

【参考】その他の気候変動に関する実績

1)スコープ 1・2の GHG 排出量実績

(単位:t-CO2

  2018 年度 2019 年度
(基準年)
2020 年度 2021 年度
Scope1 24,018 23,627 20,119 21,542
Scope2 136,569 126,960 112,087 107,514
Scope1・2合計 160,586 150,588 132,206 129,056

2)スコープ3 全項目別のGHG排出量実績

(単位:t-CO2

  2019 年度
(基準年)
2020 年度 2021 年度
  削減率
(2019 年度比)
  削減率
(2019 年度比)
1:購入した製品・サービス 969,704 453,707 - 53.2% 702,271 - 27.5%
2:資本財 71,164 97,862 + 37.5% 159,373 + 123.9%
3:Scope1,2 に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 27,473 24,854 - 9.5% 24,358 - 11.3%
4:輸送、配送(上流) 4,081 3,164 - 22.4% 4,465 + 9.4%
5:事業から出る廃棄物 6,858 5,317 - 22.4% 7,503 + 9.4%
6:出張 1,421 936 - 34.1% 963 - 32.2%
7:雇用者の通勤 2,395 2,409 + 0.5% 1,917 - 19.9%
8:リース資産(上流)
9:輸送、配送(下流)
10:販売した製品の加工
11:販売した製品の使用 2,203,005 834,184 - 62.1% 1,214,723 - 44.8%
12:販売した製品の廃棄 62,603 19,605 - 68.6% 38,859 - 37.9%
13:リース資産(下流) 19,011 14,025 - 26.2% 13,539 - 28.7%
14:フランチャイズ
15:投資
Scope3 総合計 3,367,714 1,456,063 - 56.7% 2,167,970 - 35.6%

3)省エネ法届出物件におけるエネルギー使用量実績

  2018 年度 2019 年度 2020 年度 2021 年度
エネルギー使用量(MWh/年) 445,772 422,490 381,817 379,428
原単位排出量(MWh/㎡・年) 0.224 0.208 0.184 0.182

原単位においては、省エネ法届け出物件(省エネ届け出物件)の延床面積で除して算出しています。

当社グループは「省エネ」「建物の低炭素化」「再エネ」の3つの方針で、CO2削減を推進しております。

4)「省エネ」の取り組み

4-1)ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の取り組み

当社グループは、総合的な環境負荷低減の観点から、分譲マンションにおけるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の開発に取り組んでいます。
2020年度は、経済産業省『超高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業』に「プラウドタワー亀戸クロス ゲートタワー」が、さらに、環境省「高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に「(仮称)神楽坂袋町計画」および「(仮称)武蔵浦和駅前計画」が採択されました。

ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅

ZEHマンションに向けた取り組み

環境性能と健康・快適を両立する「床快 full(ゆかいふる)」

プラウド高田馬場およびプラウドタワー亀戸クロスにおける概念図

ZEH-M の省エネ性能を実現するため、プラウド高田馬場、プラウドタワー亀戸クロスなどでは「床快 full(ゆかいふる)」を採用しています。「床快 full(ゆかいふる)」は、二重床を冷暖房と換気の経路に利用して住戸全体にエアコンの風と新鮮な外気を送ることで、24時間 365 日、住戸全体を快適に保ち、ヒートショックや熱中症のリスクを軽減する等健康維持に寄与します。また、外出時には、通常より設定温度を緩和したモードでの運転を併用することで、省エネで快適性を維持し、エネルギー効率を高めた暮らしを実現します。

4-2)グリーンビルディング認証取得に関する取り組み

当社グループは、新築および保有する不動産においてグリーンビルディングに関する環境認証(DBJ Green Building※1、LEED※2、CASBEE※3、BELS※4 など)の取得を目指します。

【定量目標】 新規に開発する固定資産・収益不動産(賃貸住宅除く)のグリーンビルディング認証取得率 100%

DBJ Green Building
日本政策投資銀行が運営する認証制度。環境・社会への貢献がなされた不動産の普及を目的としている。

LEED
米国グリーンビルディング協会(USGBC)が開発・運用、環境に配慮した建物に与えられる認証システム。

CASBEE
建築物の環境性能を総合的に評価するシステム。一般財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)などによる認証制度と自治体独自の評価制度がある。

BELS
国土交通省が制定した建築物省エネルギー性能表示制度。建築物の省エネ性能を第三者評価機関が評価し認定。

4-3)商品企画・設計時の環境性能評価

当社グループは、「設計基準」「品質マニュアル」に基づき、気候変動に対応した商品・サービスを提供しています。分譲マンション「プラウド」では、断熱等性能等級 4(最高レベル)、ペアガラス(妻面エコガラス)・LED 照明等を標準仕様とし、「環境評価&チャレンジシート」「環境&商品計画シート」を活用し環境性能向上を目指しています。

断熱等性能等級:「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能表示制度で、「温熱環境」の分野の性能を表す等級

4-4)顧客への省エネサポート

当社グループは、建物の省 CO2 化を図るだけでなく、居住者やテナント企業の運営上の省エネルギー推進をサポートしています。具体的には、エネルギー使用量集計システムや「エネルギー使用量の見える化」を図るシステムの提供、「enecoQ(エネコック)」を活用した省エネルギーの実現、会員誌でのエコ情報の提供などを行っています。

4-5)フロン削減

当社グループは、気候変動およびオゾン層の破壊につながるフロンの利用量を削減するため、ノンフロン型の断熱材やノンフロン冷媒のエアコン等を使用することを「品質マニュアル」に定めています。また、施工時には、施工会社に「品質管理チェックシート」の提出を義務付け、ノンフロン材を使用していることを確認しています。

5)建物の低炭素化(木材の利用推進、CO2の吸収・固定化)

5-1)木材サプライチェーン

日本国内の⽊材の自給率は、現在4割超となっているものの、諸外国と比較すると依然として低い水準にあり、林野庁の「森林・林業白書」では 2025年までに⽊材自給率 50%の目標が掲げられています。

自給率が低い要因の一つには、国産⽊材における川上から川下までを結ぶサプライチェーンが十分に機能していないことが挙げられ、国内に豊富な資源があるにもかかわらず、その供給先が定まらない⽊材が適齢期を迎えても伐採されず、未利⽤となっている状況です。

そこでこのたび、当社はウイング株式会社・農林水産省と「建築物⽊材利⽤促進協定」を締結し、国産⽊材が、川上から川下まで安定供給される効率的なサプライチェーン構築に取り組みます。当社は、今後5年間で建設予定の野村不動産グループの建築物において、国産⽊材の活⽤を段階的に進め、協定期間内で国産⽊材を合計10,000 ㎥利⽤、ウイングは全国の伐採・製造加工会社と協調し、国産⽊材の安定供給に努めます。

このサプライチェーンに沿って、川上、川中、川下で関わるすべての事業者が一丸となって国産⽊材の活⽤を促進することで、日本の山村の活性化、森林サイクルの維持を行います。また、この取り組みにより、森林が有する CO₂の吸収・固定化、生物多様性の保全等の多面的機能が発揮される循環サイクルを確立させることに貢献していきます。

6)「再エネ」の取り組み

6-1)物流施設における太陽光発電事業の実施

当社グループは、太陽光発電事業を実施しています。物流施設「ランドポート」において、2022年3月末現在、累計19棟に太陽光パネルを設置し、2021年度の総発電量は22,801千kWh/年です。

  2018 年度 2019 年度 2020 年度 2021 年度
物流施設「ランドポート」太陽光発電設置率(%) 92.9% 94.7% 90.0% 76.0%
物流施設「ランドポート」太陽光発電量(千 kWh/年) 12,081 15,194 21,926 22,801

6-2)戸建分譲住宅に太陽光発電を導入

野村不動産株式会社は、2022年5月、東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する太陽光PPAサービス「エネカリプラス」を活用し、野村不動産が首都圏を中心に展開する分譲戸建「プラウドシーズン」に、メガソーラー発電と同規模の太陽光発電(総発電出力1,000kW)を導入する「バーチャルメガソーラー」を始動することといたしました。総発電出力1,000kW 級の太陽光発電を、首都圏の戸建分譲住宅(プラウドシーズンの屋根 年間約300戸)に導入する国内初の取り組みであり、両社は、休閑地が少ない首都圏において省エネ・創エネを行う「電力の地産地消」の取り組みとして推進していきます。

野村不動産の「プラウドシーズン」年間約300戸に、東電EPの「エネカリプラス」を導入することで、首都圏の住宅地においてメガソーラー発電と同規模の追加性のある再生可能エネルギーの創出を毎年実現していきます。プラウドシーズン購入者(以下、プラウドシーズンオーナー)は、エネカリプラス契約期間中(10年間)、初期費用無料で太陽光発電設備で発電した電気を利用することができ、月額サービス料もかかりません。また、契約期間満了後は、太陽光発電設備が無償で譲渡されます。さらに、電気式給湯機「おひさまエコキュート」を併用することで、太陽光発電の自家消費を促進し、お客さまが電力会社から買う電気を減らすことで、昨今の燃料価格高騰の影響に伴う電気代・ガス代の上昇を抑制できます。万が一、災害が発生した場合においても、太陽光発電設備が発電される時間帯には、電気を継続して使用することができ、おひさまエコキュートに貯めたお湯は、生活用水として使用できるため、より安心な暮らしが実現できます。

6-3)再生可能エネルギーの利用

当社グループ事業である野村不動産ホテルズが運営する「ノーガホテル」全店、グループ会社UHMが運営する「庭のホテル」、野村不動産株式会社が開発するサービス特化型商業施設の「MEFULL(ミーフル)」の全調達電力について、小売電気事業者である関連会社(NFパワーサービス)が提供する「CO2ゼロプラン」を活用し、実質的に再生可能エネルギー100%を実現しており、その他ビル分も併せて、2020年度は計688万kWhの再エネを導入しています。また、日本橋室町野村ビルにおいては、グリーン電力を年間100万KWh購入しています。

7)芝浦一丁目プロジェクトにおける取り組み

芝浦一丁目プロジェクトとは、東京都港区におけるオフィス・商業・ホテル等の大規模複合施設の段階的な建替プロジェクトであり、国家戦略特区として認定を受けています。
同プロジェクトは、健康で快適なまちの創造をテーマに、次世代のテナントビルのあるべき姿とCO2削減の両立に向けて、ウェルネスオフィスの実現、各種省エネ対策による ZEB Oriented の達成を図るとともに、将来的には再生可能エネルギー由来電力等の導入によって、カーボンニュートラルの実現を目指しています。この計画が評価され、同プロジェクトは国土交通省・令和3年度サステナブル建築物等先導事業(省 CO2先導型)に採択されています。

8)サステナブル・ファイナンスの取り組み

投資家・金融機関等からのニーズに応え、グループ全体でサステナビリティ・気候変動に関する取り組みを推進するため、サステナブル・ファイナンスの取り組みを実施しています。

  • サステナビリティ・リンク・ローンの実施 (2021 年 7 月)

    野村不動産ホールディングスは、株式会社千葉銀行の協力のもとサステナビリティ・リンク・ローン(以下「SLL」)における「包括型 SLL フレームワーク」を制定し、本フレームワークに基づく調達の第一弾として、2021 年 7 月 30 日に地銀広域連携「TSUBASA アライアンス」参加 9 行からの資金調達を実施しています。
    SLL は、サスティナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下「SPTs」)等の個別要件の調整・合意が必要です。本フレームワークでは、SBT 認定済の 2030 年中長期目標(2019 年度対比 2030 年度 GHG 排出総量35%削減)を SPTs として設定し、2030 年までに目標達成することで金利優遇が受けられる仕組みです。
    同仕組みの信頼性を担保するため、株式会社格付投資情報センターより、サステナビリティ・リンク・ローン原則への適合、および設定した SPT の合理性について第三者評価を取得しています。

    ニュースリリース

  • サステナビリティボンドの発行 (2021 年 2 月)

    野村不動産ホールディングスは、環境・社会双方の課題解決に貢献する施策・プロジェクトに充当する資金の調達手段として、2021 年 2 月に「サステナビリティボンド」を 100 億円発行しています。
    本ボンドの発行に際し、「野村不動産グループ・サステナビリティボンド・フレームワーク」を策定し、本フレームワークに基づき調達した資金については、環境・社会の課題解決に貢献する適格事業に充当しています。
    同仕組みの信頼性を担保するため、第三者評価機関であるヴィジオアイリス(Vigeo Eiris)、株式会社日本格付研究所(JCR)、株式会社格付投資情報センター(R&I)より、国際資本市場協会(ICMA)のサステナビリティボンド・ガイドライン等の諸原則との適合性に対する第三者評価を取得しています。

    ニュースリリース① ニュースリリース②

サステナビリティ