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特集
南山区画整理事業地における「永続的に価値を生み出す街づくり」

概要

野村不動産は、東京都稲城市南山の約87haに及ぶ区画整理事業地において、2013年より分譲マンション「プラウドシティ南山」(2016年竣工)、戸建住宅「プラウドシーズン稲城南山」(2019年第一期竣工)の開発に取り組んでいます。
当事業は、完成まで10年以上かかり、その間広大な敷地に新しい住民が段階的に入居してくることから、エリア全体にまたがる持続可能な街づくりが事業成功のためにも不可欠でした。

土地利用計画イメージ図

「主役は地元住民」。担い手の発掘に尽力 ―立ち上げ期(2013~2014年)―

東 伸明
野村不動産(株)住宅事業本部 海外事業推進部 推進課長
グラフィック・インダストリアルデザイン事務所を経て、2003 年野村不動産に入社。分譲マンションの事業推進や、プラウドブランドの浸透などに従事。2013 年から当プロジェクトに参画。2017 年から現職。

美しい里山の風景を残し、都心と多摩地区を見下ろす高台の眺望が広がる稲城市南山エリア。広大な自然の農地と山林が広がる中、大規模商業施設などの集客装置に頼らずに、いかに街の価値を創造していくか――それが当プロジェクトの最初の課題でした。
野村不動産は、用地取得前から何度も南山に足を運び、地元住民の話に耳を傾けました。「地元の人たちの想いは明らか。土地を知り尽くした自分たちの考えを尊重してほしいというものです。そこに企業主導のエリアマネジメントを持ち込んでも受け入れられるはずはありません。地元の方の想いと要望にしっかりと応えていく――それがプロジェクトの基本方針となりました」と、当時の担当者・東伸明は振り返ります。
南山の開発の歴史は既に古く、地権者有志やNPO団体を中心とした「一般社団法人 エリアマネジメント南山」が、「自分たちの街は、自分たちで、守り育てる」を目的として、活動していました。そこで野村不動産は、「地元住民が主役」というコンセプトを明確に打ち出し、人材・アイデアなどは地元のリソースを活かしつつ、行政との折衝など裏方に徹していきました。
「コミュニティづくりに必要な各種のイベントも、コミュニティ支援に実績のある当社が企画するのは簡単ですが、それを我慢し、地元の方主導で開催していただきました」。
イベントなどを陰で支える一方で、今後10年以上にわたってコミュニティを支えていく新しい「担い手」の必要性も感じていました。「街の人から信頼されているか、街の人を大事にしているかといった観点から、街づくりの担い手となる人材を見極め、事務局機能を構築していきました。中でも有望な人材は、『エリアマネジメント南山』の専任として雇用しました」。こうして発掘された地元の人材によって実効性のある組織となった「エリアマネジメント南山」を中心に、街の新たな価値を創造する活動が本格化していきました。

一般社団法人 エリアマネジメント南山

新しく生まれる南山の街のなかで、みどりの管理運営、土地利用についての相談窓口、地域内外の交流促進など、さまざまな街の価値向上をめざして活動する会員制のエリアマネジメント組織。南山の街や緑を守り育て、持続可能な街づくりを目指して、住民や事業者、地域の関係団体とともに活動している。

エリアマネジメント南山 https://minamiyama.info/

“会費制”や“交流拠点”など、自走に向けた仕組み作り ―成長期(2015~2017 年)―

地元住民と一緒につくった交流スペース。現在もコミュニティの中心となっている。

「プラウドシティ南山」の開発を進めながら、野村不動産は「エリアマネジメント南山」の自立・自走に向けた仕組みづくりを協働して行っていきました。
まず、住宅地型エリアマネジメント組織にとって大きな課題である「活動資金の確保」については、収入源をマンション入居世帯全員が払う会費制としました。
「『エリアマネジメント南山』が、ある種自治会的な役割を担うことによって会費を得るという、新しい仕組みに挑戦したのです。私たちは資金計画を担い、行政や地元の自治会と交渉をしながら仕組みを設計していきました」。“会費収入”という形で安定的に財源を確保し、加えて、イベント等の開催による“事業収入”を、「エリアマネジメント南山」の活動資金としました。
続いて取り組んだのが、コミュニティの拠点づくりです。交流スペースを敢えてマンションの外に出し、新しい街の公園用地の中に建設しました。「普通ならマンションの1階に作るところですが、後々他ディベロッパーのマンション住民の方が入りづらいと考え、マンションから完全に切り離し公園内に作ったのです」。交流スペースは、「エリアマネジメント南山」のワークショップで地元住民たちによって設計、仕上げが行われ、建設費用のみを野村不動産が負担。随所に住民のアイデアが具現化された交流スペースは、街づくりの重要な拠点として地元住民の拠り所となっています。
併行して、首都大学東京の川原晋教授に協力を要請し、産学共同体制も構築しました。「当初は難色を示されましたが、野村不動産が目指す『永続的に価値を生み出す街づくり』という理念に共感していただき共同体制が整いました」。街づくりの活動を建築学会に発表するなど、外部の評価を得たことで、地域が改めて自らの価値に気づき、街づくりが盛り上がっていきました。

10年後も同じクオリティの生活を提供するために ―自立期(2018年~現在)―

「プラウドシーズン稲城南山」街びらきイベント。購入世帯の72%が参加しました。

里山の景色に美しい住宅街が溶け込み始めた現在、広大な区画整理事業地内には他のディベロッパーも入り、開発が進んでいます。「エリアマネジメント南山」は、「プラウドシーズン稲城南山」の全戸加入を進めるとともに、他ディベロッパーの新規分譲物件に対しても加入を呼びかけています。
「他の事業者が賛同して全戸加入してくださったり、事業者側が拒否しても、後で管理組合が希望して加入につながったケースもあります。当社事業を超えて、コミュニティが広がり始めています」。
現在は野村不動産も「エリアマネジメント南山」から“卒業”し、見守る立場を貫いています。「エリアマネジメント組織をつくる際にディベロッパーが陥りがちなのは、自ら組織に加入すること。しかし私たちは組織の名刺を持たず、すぐに去っていける体制を整えることにこだわりました。なぜなら開発期間が10年にわたる今回のプロジェクトでは、10年後のお客様にも、一定品質のコミュニティ・サービスを提供し続けなければなりません。しかしそれは、予算が変わり、担当者も代わる企業では難しいと言えるでしょう。10年後も変わらぬ価値を提供するために、エリアマネジメントのような外部組織を完全自立・自走させることが重要なのです」。
今回のプロジェクトを軌道に乗せた最大の要因は、「人を含めたその土地の価値としっかりと向き合ったこと――そこに行きつきます」。事業開始前からその土地の価値と向き合い、地元住民が主体のコミュニティを支援したことで、「持続可能な街づくり」と「エリア価値向上」という社会的課題にも応えるきっかけとなりました
現在も、南山では「街づくり」が続いています。

ステークホルダーからのコメント

首都大学東京 都市環境学部 川原 晋教授
早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻、工学博士。早稲田大学建築学科助教などを経て、2016年より現職。 専門は、都市・地域デザイン、観光まちづくり、観光地域マネジメント・事業論。

今回の街づくりで特筆すべき点は、住宅地型エリアマネジメント組織が抱えがちな課題の多くを新規住民の入居前にクリアしたことにあります。つまり、エリアマネジメントにとって重要な①活動資金を安定的に確保する、②運営の担い手を育成する、③コミュニティ活動を支える拠点を整備する、という資産を生み出したことです。
ディベロッパーである野村不動産は、新規住民の入居時期を見据えて早い時期から地域に入り、地域に愛着と想いのある人々をつなぎながらエリアマネジメントの組織づくりを裏方として支えました。特に、通常マンション内につくる交流スペースをマンションの外に出し、開発エリア全体のコミュニティ拠点として建設したことは英断だったと思います。
街びらきから数年が経ち、まだまだ開発が進行中ですが、新規居住者にも会員になってもらい、活動を発展させていくために取り組むべきことは多いですが、街びらきの時に上記の資産を有した組織が立ち上がっていたことは、コミュニティ活動の求心力や継続性に大きな力となっています。