リスクマネジメント

考え方・方針

全体方針(ガバナンス)

全体方針のほか、野村不動産グループは、リスク管理を「企業グループの組織・事業目的の達成に関わるすべてのリスクを統合的かつ一元的に管理し、自社のリスク許容限度内でリスクをコントロールしながら企業価値の向上を目指す経営管理手法」と捉え、リスクの適切な管理および運営によって経営の健全性を確保することを目的として、「リスク管理規程」を定めています。
「リスク管理規程」では、リスク管理の実践を通じ、事業の継続および安定的発展を確保することを基本方針と定め、主要なリスクを「A:投資リスク」、「B:外部リスク」、「C:災害リスク」、「D:内部リスク」の4つのカテゴリーに分類し、そのうち以下に該当するリスクを管理すべき重要なリスクと定め、リスクの規模・特性などに応じた有効かつ効率的な管理を行っています。これらのリスクは、中長期にわたって新興するリスク(経済・環境・地政学等)についても含まれています。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づき、気候変動関連のリスク管理および対応を推進しています。

〈主要なリスクのうち管理すべき重要なリスクに該当するもの〉
・グループ経営に大きな影響を及ぼすおそれのあるリスク
・社会的に大きな影響を及ぼすおそれのあるリスク
・訴訟等の重大なトラブルが発生するリスク
・その他野村不動産グループとして管理すべき重要なリスク

主要なリスク

リスクカテゴリー(定義) 主要なリスク項目
A:投資リスク 個別の投資(不動産投資・戦略投資(M&A)など)に関するリスク ① 不動産投資に伴うリスク
② 戦略投資(M&A)・新規事業に伴うリスク
B:外部リスク 事業に影響を及ぼす外的要因に関するリスク ③ 市場の変化によるリスク
④ 経済情勢の変化によるリスク

政治・社会情勢・制度(法規制・税制・会計制度など)の変化によるリスク

事業の前提となる社会情勢の変化・イノベーションに遅れることによるリスク

C:災害リスク 顧客および事業継続などに大きな影響を与える災害に起因するリスク

顧客および事業継続などに大きな影響を与える災害(地震・台風・洪水・津波・噴火・大火災・感染症の流行など)に起因するリスク

D:内部リスク 当社およびグループ各社で発生するオペレーショナルなリスク ⑧ 法令違反によるリスク
⑨ 品質不良の発生によるリスク
⑩ 情報システム危機発生によるリスク
⑪ 人材に関する事項への対応不備によるリスク
⑫ 不正、過失などの発生によるリスク

気候変動に伴うリスクについては、以下リンク先をご参照ください。

特集 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

マネジメント

リスク管理体制

当社は、グループ経営に関するさまざまなリスクを審議するため、経営会議をリスクの統合管理主体として定め、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価・分析し、各部門およびグループ各社に必要な指導、助言を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告する体制を整えています。

A:投資リスク
B:外部リスク
統合管理主体である経営会議が直接モニタリング等を実施します。
C:災害リスク
D:内部リスク
経営会議の下部組織として設置している「リスクマネジメント委員会」が定期的にモニタリング、評価・分析するとともに、発生前の予防、発生時対応、発生後の再発防止等などについての対応策の基本方針を審議します。

リスクマネジメント委員会

経営会議の下部組織であるリスクマネジメント委員会は、取締役会で指名された当社およびグループ各社の取締役・執行役員で構成され、グループ法務コンプライアンス部担当役員(野村不動産ホールディングス執行役員)を委員長としております。
また、リスクマネジメント委員会委員長が指名したグループ各社の取締役、執行役員などで構成する「グループリスク連絡会議」を設置し、グループ内でのリスク情報および対応方針を共有しています。

リスク管理体制(概念図)

リスク管理については、各部門長が所管する部門のリスク管理を統括し、その状況を必要に応じて経営会議またはリスクマネジメント委員会に報告するとともに、グループ各社の社長(野村不動産においては各本部長)は、リスク管理に関する事項について適時適切に部門長に報告しています。また、グループ各社で事業を掌る組織をリスク管理の「第1線」、当社およびグループ各社でコーポレート業務を掌る組織を同「第2線」、当社およびグループ各社で内部監査を掌る組織を同「第3線」と定義し、それぞれの立場からリスク管理における役割を担うことで、ディフェンスラインを構築しています。
なお、リスク管理体制は、ISO31000、一般社団法人日本内部監査協会(IIA)のリスクマネジメントのフレームワークを参照しています。


詳しくは有価証券報告書(P30~P37)をご覧ください。

実績

実績データ

項目 単位 2019年度実績 2020年度実績 2021年度実績 2022年度実績
リスクマネジメント委員会およびグループリスク連絡会議の実施回数 12 13 13 13

主要リスクに記載の各リスクカテゴリーにおいて、特に注視するリスク(2023年度)

リスクカテゴリー 具体的なリスク内容
A:投資リスク

用地取得の競争激化等により、想定した事業量が確保できず、中長期経営計画で見込んでいる利益成長が実現困難なリスク

資材価格の高騰に伴う工事費の上昇や工期の遅延、またエネルギー調達コストの高騰等により、想定した収益の獲得が見込めないリスク

再開発事業など事業期間が長期間でかつ投資金額が大きいプロジェクトについて、経済情勢の変動により収益性の悪化や想定事業スケジュールの遅延等が生じるリスク

B:外部リスク

国内不動産市場や金融情勢の変化により、分譲住宅の販売価格・収益不動産、更には資産入替物件の売却価格に影響が生じるリスク

海外各国の経済・不動産市場の悪化やゼネコンやJVパートナーの財務状況悪化等により、海外事業の収益性悪化や利益回収時期の遅延が生じるリスク

ライフスタイルや価値観の変化への対応、デジタルテクノロジーの加速度的な進化への対応、またサステナビリティ・人材への対応等が遅れることにより、当社事業の競争優位性が低下するリスク

C:災害リスク

甚大化する地震、台風、豪雨等の自然災害により事業が継続できないリスク

D:内部リスク

不動産開発事業における設計・施工の不備の発生によるリスク

多様な人材を確保し、人材が活躍し続けるための人事制度の整備が遅れることによるリスク

サイバー攻撃による情報流出、事業継続への影響、損害等の発生・拡大によるリスク

資材価格、エネルギーコストなどの上昇を踏まえた受注者への適正な価格転嫁を実現するための取引体制の強化の遅れにより、法令等に抵触し、また相手方との円滑な取引の実現に支障が生じるリスク

ESGデータ集(ガバナンス)

取り組み

ストレステストの実施

当社グループにおいては、国内外の景気動向、市場変化、社会情勢・制度の変化に起因して、各事業の収益性悪化、保有資産の価値が下落する可能性があります。
当該可能性が、許容可能なリスクの範囲内であるかを適切に判断するために、当社では複数パターンのストレステストを実施しています。
また、ストレステストの結果については、取締役会において適宜報告しています。

情報セキュリティへの対応

当社グループは、秘密保全の必要性が高い個人情報や営業秘密情報などを重要情報と定め、管理体制と取扱いなどに関する基本的事項を定めた「情報セキュリティ規程」を策定しています。
本規定に則り、管理者として情報セキュリティ最高責任者(リスクマネジメント委員会委員長である内部監査・コンプライアンス担当役員が兼任)、文書情報統括責任者(グループ法務コンプライアンス部長)、電子情報統括責任者(ICTマネジメント部長)を配置し、情報の組織的管理とセキュリティのレベルの維持向上を図っています。
また、急速な広がりを見せるデジタル技術を利用した事業の増加、テレワークの急増やクラウド活用などによる業務形態の変化に伴い、当社グループでは「情報取扱いガイドライン」を作成・運用し、企業内の情報セキュリティ強化に努めています。ガイドラインでは、重要情報の保管・管理方法、情報が漏えいした場合の対応、情報システム紛失時の対応などを記載しています。

サイバーリスク・システムリスクへの対応

当社グループでは、クラウドサービスの利活用等が浸透している一方で、社会では企業のネットワークやPCへの不正アクセス、システムやデータを利用不能にして身代金を要求するランサムウェア攻撃の被害が増えており、当社グループにおいてもサイバー攻撃に起因するシステム停止や情報漏えい等は、事業の継続性を揺るがす新たなリスクであると認識し、対応が喫緊となっています。
上記のような脅威への対応として、サイバーリスク・システムリスクへの防御力を向上させるリスク回避対策、重大インシデントが発生してしまったときのリスク低減策の2軸による取り組みを行っています。

「情報取扱いガイドライン」の整備と社内浸透

当社グループは、パートや派遣社員を含む全従業員に対して、取扱う情報、情報システム機器などについて、情報漏えい等のリスク低減を目的に、その取扱い方法を「情報取扱いガイドライン」で定めています。
同ガイドラインでは、情報利用、保管、廃棄等において権限を付与された役職員のみが取扱うルールを設けているほか、漏えい時の対応・委託先等への情報提供方法のルールなども定めています。
また、これらルールを周知するため、グループ全役職員を対象とした情報セキュリティ研修を2~3回/年実施するとともに、即自的に周知が必要な事項については、メール配信およびイントラサイトへの掲示等を行っています。
そのほかに、生成系AIへの対応として、情報漏えい、著作権・プライバシー等の権利侵害、虚偽情報のリスクなどの観点から、社内利用限定・シークレットモード設定などの一定のルールを設けています。

野村不動産ホールディングス 個人情報保護方針

当社グループは、個人情報を適切に保護することを事業運営上の重要事項と位置付け、個人情報の保護に関する法律および関係法令に従い、お客さまの個人情報を、細心の注意をもって管理しています。

個人情報保護方針

社会・環境に関するリスク管理

当社グループは、社会・環境課題に関するリスクについても確認を行っています。その内容については、野村不動産ホールディングスおよびグループ会社の取締役などで構成する「サステナビリティ委員会」(委員長:野村不動産ホールディングス代表取締役社長 兼 グループCEO)にて報告されています。重要な事案については、取締役会にて報告、対応を審議しています。
2022年度は「再生可能エネルギー調達方針」「調達ガイドライン改定」等について議論を行い、取締役会へ3回の報告を行っております。

報告内容

再生可能エネルギー調達方針について

調達ガイドライン改定

上期活動実績と下期方針、2021年度環境データ実績および差異分析報告

サステナビリティマネジメント

法令違反、社会・環境(ESG)問題を含む訴訟に備えての引当金について

日本会計基準に基づき、連結財務諸表においては、日本会計基準に基づいて、発生の可能性が高く金額の合理的な見積りが可能な場合に引当金を計上しています。
2022年度以前の事案に起因した将来発生可能性の高い罰金・和解金に関連して、2022年3月期末時点において、重要な引当金の計上はありません。

「お問い合わせ窓口」の設置

当社グループは、製品・サービスに不具合が判明した場合の迅速かつ的確な対応を目的として、野村不動産ホールディングスおよびグループ各社に「お問い合わせ窓口」を設置しています。窓口に集まった主要なリスク情報については、リスクマネジメント委員会に報告の上、グループ内で情報を共有し、再発防止に努めています。

災害時の事業継続計画(BCP)策定

当社グループは、災害発生時における事業継続に関する行動計画(BCP)を策定し、非常時の指揮命令系統、事業継続のための任務分担などを定め、災害の影響を最小限に抑える体制を整備し、年に一度「災害対策本部設置訓練」を実施することで、規定内容の確認(役職員の生命や安全の確保、指揮系統の確立、事業復旧)を行い、非常時に備えています。
また年に一度、野村不動産ホールディングス代表取締役社長を本部長とする災害対策本部メンバーを招集し、「災害対策本部設置訓練」を実施しています。当訓練では、事業継続計画(BCP)で策定した初動対応の確認(役職員の生命の安全確保、指揮系統の確立、事業復旧)などを行い、震災をはじめとした非常事態に備えています。

役職員の安否確認

当社グループは、災害発生時に役職員の被災状況と安全を迅速に把握するため、インターネットやメールを用いた安否確認のシステムを導入し、グループ全役職員を対象に、年4回の安否確認訓練を実施しています。

サステナビリティ