気候変動への認識
気候変動は、現時点で「持続可能な社会の発展」を脅かす最も影響の大きいリスクの一つとして世界全体で認識されています。2013年~2014年に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書では、人間の活動が及ぼす温暖化・気候変動への影響についての評価として「可能性が極めて高い」(95%以上)と記載されています。その後、2021年8月に公表されたIPCCの第6次報告書において、気候変動・温暖化の主因が人間の活動であることは「疑う余地がない」と記載されています。
こういった科学的見解を踏まえ、社会全体・世界各国において気候変動に関する対応が議論されています。2015 年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、「世界の平均気温の上昇について、産業革命以前と比べ、2℃より十分に低く保ちつつ、1.5℃までに抑える」努力を追求する「パリ協定」が採択されました。このパリ協定に基づき、各国政府が温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)の削減目標を立案するとともに、さまざまな気候変動に関する施策を展開しています。例えば、当社グループが主に事業を営む日本においては、2020年10月に「2050年にカーボンニュートラルを目指す」旨の宣言が政府より公表されています。
気候変動が世界経済・企業への活動に与える影響は年々大きくなってきています。このため、株主・投資家の皆さまにおいては「各企業の事業・計画は、気候変動よりどのような影響を受けるのか」を判断するニーズが年々高まってきています。このため、各企業の気候変動のリスク・機会を適切に評価できるような世界共通のフレームワークの必要性が認識され、G20および各国中央銀行からの要請に応える形で、気候変動への対応に関する情報開示を促すためにTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース、Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が設置されました。TCFDは、2017年6月に最終報告書を公表し、各企業に対し気候変動に関する情報開示を推進しています。
■当社グループの考え方・方針
このような環境を踏まえ、当社グループにおける2050年のありたい姿としてサステナビリティポリシー「Earth Prideー地球を、つなぐー」を策定いたしました。
これまで当社グループは、「私たちの約束」として「あしたを、つなぐ」というグループ企業理念のもと、不動産開発と不動産関連サービスの連携による事業活動を推進してまいりましたが、2050年という将来に向けて、企業活動の舞台である地球を“誇れる地球”として未来へつなげていくために、企業として果たしたい役割をこのサステナビリティポリシーに込めました。
この「Earth Prideー地球を、つなぐー」は、当社グループが大切にしたい「人間らしさ」、「自然との共生」、「共に創る未来」の3つのテーマをベースにしています。
このサステナビリティポリシーは、持続可能な社会と企業成長を実現する企業グループとして、2050年のありたい姿を言語化したものです。また、策定においては、当社グループの中堅・若手社員やマネジメント層および経営層、社外の機関投資家・金融機関、顧客、取引先や有識者など、数多くの方々から意見をいただきました。
2050年のサステナビリティポリシーを実現するために、2030年までに特に取り組むべき重点課題として、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「人権」、「脱炭素」、「生物多様性」、「サーキュラーデザイン」の5つを特定しています。
■目標
気候変動と自然環境 | 国際的な喫緊課題であるCO2排出量削減への貢献と、CO2削減に寄与する生物多様性保全、循環型社会の実現 | |||||
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脱炭素 | 「省エネルギー」「事業の低炭素化」「再生可能エネルギー転換」への取り組み <目標:2019年度比で2030年までにScope1,2,3で35%削減 > |
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生物多様性 | 国内の森林循環の回復を通し、多様な生物が生息できる都市緑化や森林保全によるCO2吸収や自然環境への貢献 | |||||
サーキュラーデザイン | 建物長寿命化、再資源化、シェアリングなどを取り入れた街づくりやサービスの提供を通じた脱炭素社会、循環型経済への貢献 |
社会と社員 | 組織や業態を超えた「共創」の為のサステナビリティの推進基盤の強化 | |||||
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ダイバーシティ& インクルージョン |
女性や外国人をはじめとするさまざまなバックグラウンド・価値観を持つ多様な人材が最大限に能力発揮できる組織作り | |||||
人権 | あらゆる社員、事業にかかわるすべての人々の尊厳と基本的人権が尊重しあえる企業としての基盤固め |
■気候変動と自然環境
不動産開発と不動産関連サービスの連携により、街づくりや商品・サービスを通じて、世界共通のテーマである気候変動課題の解決に貢献するとともに、自然環境の保全にもつながる重点課題を特定いたしました。また、これまで当社グループは、SBT認定の取得(2019年度比 35%削減)、TCFDの賛同、RE100への加盟など、国際的なイニシアティブへの参加を進めてまいりました。
■脱炭素
当社グループ開発建物における「省エネ」、「低炭素化」、「再エネ」の推進によるCO2総排出量の削減
<主な取り組み>
ZEH/ZEB oriented 水準を確保した省エネルギー性能のさらなる向上を目指します。
建設会社や建材メーカーなどとの共創により、低炭素資材の利用促進に向けた研究開発に取り組みます。
当社グループが開発する建物(物流施設・分譲戸建など)の屋根を活用した太陽光発電所の設置など、追加性のある再生可能エネルギー由来の発電の増加に貢献します。
芝浦一丁目プロジェクト(S棟:2024年度、N棟:2030年度竣工)において、カーボンニュートラルを実現するとともに、東京大学先端科学技術研究センターと次世代エネルギー交流施設を新設するなど、街づくりを通じて社会における気候変動への対応を目指します。
気候変動の考え方・方針
野村不動産グループは、土地やその他の天然資源、エネルギーを利用して事業活動を行っており、気候変動は当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす重要な経営課題であると認識しています。野村不動産ホールディングス株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 グループCEO 新井 聡)は、2020年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織「TCFDコンソーシアム」へ加入しています。
ガバナンス
気候変動関連のグループ全体の方針・目標等については、野村不動産ホールディングスおよびグループ会社の役員などで構成される「サステナビリティ委員会」(委員長:野村不動産ホールディングス代表取締役社長 兼 グループCEO)で審議しています。同委員会は、経営会議の下部の会議体と位置付けられ、これまで毎年3回以上開催のうえ、気候変動に関するリスク・機会の検討、グループ GHG 削減目標等の検討およびモニタリング等を行っています。サステナビリティ委員会の審議内容については、原則として半年に1回以上、取締役会ならびに経営会議に報告されます。併せて、グループ経営において重要な事項がある場合は、都度、取締役会・経営会議に報告する体制としています。
上述した通り、当社グループでは、野村不動産ホールディングス代表取締役 兼 グループCEOが責任者となり、グループ全体でサステナビリティ・気候変動への対応を進めています。グループCEOは、取締役会・経営会議における執行側の最高責任者であり、サステナビリティや気候変動課題への対応を含む、当社グループの企業としての持続的な成長を実現するために最善の意思決定を下し、関連する重要な業務を執行する責任を負います。
なお、当社グループでは、2019年度より、CEO を含む役員の選任要件として、社会の変化や時代の要請への適合と高い意識を有することを求めており、役員報酬の決定においても気候変動を含む、サステナビリティ・ESG に関する要件を取り入れています。当社グループの役員報酬制度では、各役員が所管するビジネス領域における、気候変動への対応を含むサステナビリティに関する目標達成度を評価基準に組み入れており、役員は与えられたサステナビリティ・ESG に関する役割について、その達成度に応じた変動報酬が算出される制度になっています。
また、2022年度より、監査等委員を除く取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針を改定のうえ、金銭報酬である賞与に係る業績指標等の内容、算定方法について、業績による評価を中心としつつ、非財務指標(サステナビリティ要素等)による評価も行うことにしました。これは取締役のサステナビリティに関する意識付けの向上を目的としたものであり、2022年度は当該非財務指標としてBEI※を基準とする評価を行いました。
Building Energy - efficiency Indexの略。建築物エネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の省エネ基準に基づく、建築物の省エネルギー性能を評価する指標。建築物の一次エネルギー消費量の水準を示す。
戦略
当社グループは、気候変動の戦略を検討するにあたり、IPCC 第6次評価報告書およびパリ協定における合意内容等を踏まえ、シナリオを用いた定性的な分析を行いました。気候変動が当社グループにとってどのようなリスク・機会をもたらしうるかを検討し、それらのリスク・機会をとらえる戦略と施策を検討・実施しています。
分析の範囲
当社グループは、住宅部門(マンション・戸建住宅の開発・分譲等)、都市開発部門(オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテルの開発・賃貸・販売等)、海外部門(海外における開発・分譲・賃貸等)、資産運用部門(REIT・私募ファンドの運用等)、仲介・CRE 部門(不動産の仲介等)、運営管理部門(不動産の管理等)、その他より構成されますが、グループ全事業を分析の対象範囲としています。
なお、GHG排出量の算定範囲として、当社グループのスコープ1・2・3すべてを対象としています。
シナリオの設定
シナリオ分析においては、パリ協定の達成および脱炭素社会の実現を念頭に置き、「1.5℃シナリオ」「2℃シナリオ」を採用しました。また、本分析においては、気候変動対策が十分に進展せずその結果として自然災害が激甚化するケースとして「4℃シナリオ」も検討しています。それぞれのシナリオにおける世界像構築にあたっては以下の文献等を参考にしています。
- ・国連IPCC第5次評価報告書(2014 年)「代表濃度経路(RCP)2.6」「代表濃度経路(RCP)8.5」
- ・国連IPCC第6次評価報告書(2021年)
- ・IEA World Energy Outlook(2020年)「持続可能な開発シナリオ(SDS)」「すでに公表済みの政策によるシナリオ(STEPS)」
各シナリオにおいて想定される世界像
各シナリオで想定される変化を元に、1.5℃シナリオ、2℃シナリオ、4℃シナリオにおける2050年の世界像を設定しています。
リスク・機会の特定
TCFD提言では、気候変動に関わるリスク・機会について、移行リスク・機会(政策・法規制、技術、市場、評判)・物理的リスク・機会(急性、慢性)に分類しています。当社グループは、この分類に従い、各リスク・機会項目について、財務インパクトにおける影響度(小・中・大に分類)、時間軸における影響度(長・中・短に分類)を特定しています。
財務インパクト 影響度基準 |
影響度設定 | 連結事業利益への影響度 | 2023年3月期実績(金額/年) |
---|---|---|---|
大 | 10%~ | 105億円~ | |
中 | 5%~10% | 52~105億円 | |
小 | ~5% | ~52億円 |
時間軸基準 | 影響期間設定 | 想定期間 |
---|---|---|
短期 | ~2025年 | |
中期 | ~2030年 | |
長期 | ~2050年 |
分類 | 項目 | 1.5℃ | 2℃ | 4℃ | |||||
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大分類 | 小分類 | 影響度 | 期間 | 影響度 | 期間 | 影響度 | 期間 | ||
リスク | 移行 リスク |
政策・ 法規制 |
ZEB,ZEH規制対応による工事費増 | 小 | 中~長 | 小 | 中 | 無 | 無 |
炭素税:自社排出への課税(Scope1,2) | 小 | 中~長 | 小 | 中 | 小 | 短 | |||
市場 | 炭素税:開発コスト増 (Scope3カテ1) |
中 | 中~長 | 中 | 中 | 小 | 短 | ||
省エネ設備等の投資 | 小 | 中~長 | 小 | 中 | 無 | 無 | |||
評判 | 非ZEB物件の年間賃料損失 | 中 | 中 | 中 | 中 | 無 | 無 | ||
技術 | 事業・商品等に対する信頼性等の変化 | ー | |||||||
物理的 リスク |
急性 | 風水害の激甚化による損害増(洪水) | 小 | 長 | 小 | 長 | 小 | 長 | |
慢性 | 海面上昇被害(洪水) | 小 | 長 | 中 | 長 | 中 | 長 | ||
気温上昇被害(猛暑日) | 小 | 長 | 小 | 長 | 小 | 長 | |||
機会 | 移行 機会 |
政策・ 法規制 |
省エネ技術、ZEB、ZEH等の補助金制度の拡充 | ー | |||||
市場 | 太陽光発電収益 | 小 | ー | 小 | ー | ー | ー | ||
評判 | ZEB物件売却収益増 | 中 | 中 | 中 | 中 | 無 | 無 | ||
ZEH物件売上増 | 大 | 中 | 大 | 中 | 無 | 無 | |||
技術 | 事業・商品等に対する信頼性等の変化 | ー | |||||||
CO2削減による資金調達コスト減 | 小 | 短 | 小 | 短 | 小 | 短 | |||
省エネ性能向上による光熱費減 | 小 | 中 | 小 | 中 | 小 | 中 |
一部、現時点では定量化が困難な項目は「ー」で表示
リスク管理
リスク カテゴリ |
定義 | |
---|---|---|
A | 投資リスク | 個別の投資(不動産投資・戦略投資(M&A)等)に関するリスク |
B | 外部リスク | 事業に影響を及ぼす外的要因に関するリスク |
C | 災害リスク | 顧客および事業継続等に大きな影響を与える災害に起因するリスク |
D | 内部リスク | 当社およびグループ各社で発生するオペレーショナルなリスク |
当社グループでは、グループ経営に関するさまざまなリスクの審議を行うため、経営会議をリスクの統合管理主体として定め、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価および分析を行い、各部門およびグループ各社に対して必要な指導および助言を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告を行う体制としています。「A:投資リスク」、「B:外部リスク」については、統合管理主体である経営会議が直接モニタリング等を行い、「C:災害リスク」および「D:内部リスク」については、経営会議の下部組織として設置している「リスクマネジメント委員会」が定期的なモニタリング、評価および分析を行うとともに、発生前の予防、発生時対応、発生後の再発防止等についての対応策の基本方針を審議しております。気候変動を含むサステナビリティ関連のリスクに関しては、取締役会及び経営会議が管理・監督するとともに、経営会議の下部組織であるサステナビリティ委員会で都度審議しています。また、事業に関する個別事項(ビジネス企画・商品企画等)については各事業部門で管理しています。
具体的には、マーケット(顧客企業、消費者)や法規制(建築、不動産等)に関するリスクを個々に調査・把握し、事業・商品等の企画に都度反映させるとともに、各事業部門で検討された事項のうち当社グループ全体に影響が大きい事項については、内容に応じて、取締役会・経営会議・サステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会に適宜報告されています。
指標と目標
当社グループでは、気候変動への対応を進めるために、以下の目標を掲げており、温室効果ガスについても以下記載の指標を設定しています。
項目 | 対象 | 2030年目標 | 単位 | |
---|---|---|---|---|
【長期】2050年までカーボンニュートラルの実現 | グループ全体のScope1・2 および3※1 | 0 | 千t-CO2 | |
CO2排出量総量削減率 | KPI【中期】2030年まで 総量削減率(2019年度比) (2020年11月SBT認定取得率) |
グループ全体のScope1・2 および3(カテゴリ1・11)※2 | 35 | % |
【短期】2025年まで 総量削減率(2019年度比) |
15 | |||
エネルギー使用量の削減 | 【中期】2050年まで 再生可能エネルギー由来の電力の使用 (2022年1月RE100加盟済) |
グループ全体 | 100 | % |
【短期】2023年度まで 再生可能エネルギー由来の電力の使用※3 |
野村不動産が保有する国内すべての賃貸資産 | |||
KPI新築物件における省エネルギー性能指標 ZEH/ZEB oriented水準を確保(BEI値の達成)※4 | 水準確保 | - |
Scope1:燃料の燃焼などの直接排出量 Scope2:自社で購入した電気・熱の使用に伴う間接排出 Scope3:Scope1・2以外の間接排出量
Scope3については、カテゴリ1(建物の建設時等)およびカテゴリ11(販売した商品の使用時)を対象としており、2019年度実績で、Scope3の約94.21%をカバーしています。
野村不動産が電力会社と直接電力契約を実施する賃貸資産(テナント使用分含む)、野村不動産が他者と区分・共有して保有する資産、売却・解体対象資産および一部賃貸住宅の共用部は除く。
2030年までにZEH/ZEB oriented水準を確保するために、単年度ごとに達成すべきBEI値※を設定。同値の達成度を計測。
BEI値:Building Energy-efficiency Indexの略。建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の省エネ基準に基づく、建築物の省エネルギー性能を評価する指標。建築物の一次エネルギー消費量の水準を示す。
当社グループは、原則、グループ全体で保有・販売する物件すべてについて、GHG(CO2)排出量に関するデータを収集し、その実績集計およびモニタリングを行うことによって、グループ全体の GHG 排出量の削減を行い、気候変動への対応を進めます。また、将来的には 2050 年カーボンニュートラル実現を視野に入れた超長期的目標の設定も検討します。当社グループの気候変動に関する実績については、下記をご参照ください。
中長期目標※
(単位:千t-CO2)
2019 年度 (基準年) |
2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
削減率 | 削減率 | 削減率 | |||||
Scope1 | 23 | 20 | -14.8% | 21 | -8.8% | 23 | -0.5% |
Scope2 | 126 | 112 | -11.7% | 107 | -15.3% | 74 | -41.1% |
Scope1・2合計 | 150 | 132 | -12.2% | 129 | -14.3% | 98 | -34.7% |
Scope3 Category1.購入した製品・サービス | 969 | 453 | -53.2% | 702 | -27.6% | 698 | -28.0% |
Scope3 Category11.販売した製品の使用 | 2,203 | 834 | -62.1% | 1,214 | -44.9% | 1,170 | -46.9% |
Scope3 合計 注)目標対象のみ |
3,172 | 1,287 | -59.4% | 1,916 | -39.6% | 1,868 | -41.1% |
精度向上のため、過年度データを遡及して修正しました。
第三者保証
当社グループは、グループ全体の GHG 排出量・エネルギー使用量のデータについて、ロイドレジスタークオリティアシュアランスリミテッドより第三者保証を取得しています。
【参考】その他の気候変動に関する実績
1)スコープ 1・2の GHG 排出量実績
(単位:千t-CO2)
2019 年度 (基準年) |
2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | |
---|---|---|---|---|
Scope1 | 23 | 20 | 21 | 23 |
Scope2 | 126 | 112 | 107 | 74 |
Scope1・2合計 | 150 | 132 | 129 | 98 |
2)スコープ3全項目別のGHG排出量実績※1
(単位:千t-CO2)
2019 年度 (基準年) |
2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
削減率 | 削減率 | 削減率 | |||||
1:購入した製品・サービス | 969 | 453 | -53.2% | 702 | -27.6% | 698 | -28.0% |
2:資本財 | 71 | 97 | +37.5% | 159 | +124.0% | 111 | +56.1% |
3:Scope1,2 に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 | 27 | 24 | -9.5% | 24 | -11.3% | 24 | -10.7% |
4:輸送、配送(上流) | 4 | 3 | -22.5% | 4 | +9.4% | 6 | +69.7% |
5:事業から出る廃棄物 | 6 | 5 | -22.5% | 7 | +9.4% | 11 | +69.7% |
6:出張 | 1 | 0※2 | -34.1% | 0※2 | -32.2% | 1 | -29.3% |
7:雇用者の通勤 | 2 | 2 | +0.6% | 1 | -20.0% | 1 | -32.8% |
8:リース資産(上流) | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
9:輸送、配送(下流) | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
10:販売した製品の加工 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
11:販売した製品の使用 | 2,203 | 834 | -62.1% | 1,214 | -44.9% | 1,170 | -46.9% |
12:販売した製品の廃棄 | 62 | 19 | -68.7% | 38 | -37.9% | 38 | -38.8% |
13:リース資産(下流) | 19 | 14 | -26.2% | 13 | -28.8% | 12 | -36.9% |
14:フランチャイズ | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
15:投資 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
Scope3 総合計 | 3,367 | 1,456 | -56.8% | 2,167 | -35.6% | 2,075 | -38.4% |
精度向上のため、過年度データを遡及して修正しました。
1未満
3)省エネ法届出物件におけるエネルギー使用量実績
2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | |
---|---|---|---|---|
エネルギー消費量(MWh) | 422,490 | 381,817 | 379,428 | 382,231 |
原単位エネルギー消費量(MWh/m2) | 0.208 | 0.184 | 0.182 | 0.186 |
原単位においては、省エネ法届け出物件(省エネ届け出物件)の延床面積で除して算出しています。
当社グループは「省エネ」「建物の低炭素化」「再エネ」の3つの方針で、CO2削減を推進しております。
4)「省エネ」の取り組み
4-1)ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の取り組み
当社グループは、総合的な環境負荷低減の観点から、分譲マンションにおけるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)※の開発に取り組んでいます。2022年度には、「プラウド青葉台」が環境省「高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に、さらに、2023年度には「プラウドタワー相模大野クロス」が経済産業省『超高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業』に採択されました。今後は、2030年までにすべての新築物件においてZEHならびにZEB oriented水準を確保していきます。戸建住宅においても2022年度より、取り組みを進めてまいります。
ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅
環境性能と健康・快適を両立する「床快 full(ゆかいふる)」
ZEH-Mの省エネ性能を実現するため、一部のプラウド物件では「床快 full(ゆかいふる)」を採用しています。「床快 full(ゆかいふる)」は、二重床を冷暖房と換気の経路に利用して住戸全体にエアコンの風と新鮮な外気を送ることで、24時間365日、住戸全体を快適に保ち、ヒートショックや熱中症のリスクを軽減する等健康維持に寄与します。また、外出時には、通常より設定温度を緩和したモードでの運転を併用することで、省エネで快適性を維持し、エネルギー効率を高めた暮らしを実現します。
4-2)グリーンビルディング認証取得に関する取り組み
当社グループは、新築および保有する不動産においてグリーンビルディングに関する環境認証(DBJ Green Building※1、LEED※2、CASBEE※3、BELS※4 など)の取得を目指します。
【定量目標】 新規に開発する固定資産・収益不動産(賃貸住宅除く)のグリーンビルディング認証取得率 100%
DBJ Green Building
日本政策投資銀行が運営する認証制度。環境・社会への貢献がなされた不動産の普及を目的としている。
LEED
米国グリーンビルディング協会(USGBC)が開発・運用、環境に配慮した建物に与えられる認証システム。
CASBEE
建築物の環境性能を総合的に評価するシステム。一般財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)などによる認証制度と自治体独自の評価制度がある。
BELS
国土交通省が制定した建築物省エネルギー性能表示制度。建築物の省エネ性能を第三者評価機関が評価し認定。
4-3)顧客への省エネサポート
当社グループは、建物の省 CO2 化を図るだけでなく、居住者やテナント企業の運営上の省エネルギー推進をサポートしています。具体的には、エネルギー使用量集計システムや「エネルギー使用量の見える化」を図るシステムの提供、「enecoQ(エネコック)」を活用した省エネルギーの実現、会員誌でのエコ情報の提供などを行っています。
4-4)フロン削減
当社グループは、気候変動およびオゾン層の破壊につながるフロンの利用量を削減するため、ノンフロン型の断熱材やノンフロン冷媒のエアコン等を使用することを「品質マニュアル」に定めています。また、施工時には、施工会社に「品質管理チェックシート」の提出を義務付け、ノンフロン材を使用していることを確認しています。
5)建物の低炭素化(木材の利用推進、CO2の吸収・固定化)
5-1)木材サプライチェーン
日本国内の⽊材の自給率は、現在4割超となっているものの、諸外国と比較すると依然として低い水準にあり、林野庁の「森林・林業白書」では 2025年までに⽊材自給率 50%の目標が掲げられています。
自給率が低い要因の一つには、国産⽊材における川上から川下までを結ぶサプライチェーンが十分に機能していないことが挙げられ、国内に豊富な資源があるにもかかわらず、その供給先が定まらない⽊材が適齢期を迎えても伐採されず、未利⽤となっている状況です。
そこでこのたび、当社はウイング株式会社・農林水産省と「建築物⽊材利⽤促進協定」を締結し、国産⽊材が、川上から川下まで安定供給される効率的なサプライチェーン構築に取り組みます。当社は、今後5年間で建設予定の野村不動産グループの建築物において、国産⽊材の活⽤を段階的に進め、協定期間内で国産⽊材を合計10,000 ㎥利⽤、ウイングは全国の伐採・製造加工会社と協調し、国産⽊材の安定供給に努めます。
このサプライチェーンに沿って、川上、川中、川下で関わるすべての事業者が一丸となって国産⽊材の活⽤を促進することで、日本の山村の活性化、森林サイクルの維持を行います。また、この取り組みにより、森林が有する CO₂の吸収・固定化、生物多様性の保全等の多面的機能が発揮される循環サイクルを確立させることに貢献していきます。
6)「再エネ」の取り組み
6-1)物流施設における太陽光発電事業の実施
当社グループは、太陽光発電事業を実施しています。物流施設「ランドポート」において、2023年3月末現在、累計19棟に太陽光パネルを設置しており、ポートフォリオ全体における発電量は22,356MWh/年でした。
2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | |
---|---|---|---|---|
物流施設「ランドポート」太陽光発電設置率(%) | 94.7 | 90.0 | 76.0 | 67.8 |
物流施設「ランドポート」における太陽光発電量(MWh) | 15,194 | 21,926 | 22,801 | 22,356 |
6-2)戸建分譲住宅に太陽光発電を導入
野村不動産株式会社は、2022年5月、東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する太陽光PPAサービス「エネカリプラス」を活用し、野村不動産が首都圏を中心に展開する分譲戸建「プラウドシーズン」に、メガソーラー発電と同規模の太陽光発電(総発電出力1,000kW)を導入する「バーチャルメガソーラー」を始動することといたしました。総発電出力1,000kW 級の太陽光発電を、首都圏の戸建分譲住宅(プラウドシーズンの屋根 年間約300戸)に導入する国内初の取り組みであり、両社は、休閑地が少ない首都圏において省エネ・創エネを行う「電力の地産地消」の取り組みとして推進していきます。
野村不動産の「プラウドシーズン」年間約300戸に、東電EPの「エネカリプラス」を導入することで、首都圏の住宅地においてメガソーラー発電と同規模の追加性のある再生可能エネルギーの創出を毎年実現していきます。プラウドシーズン購入者(以下、プラウドシーズンオーナー)は、エネカリプラス契約期間中(10年間)、初期費用無料で太陽光発電設備で発電した電気を利用することができ、月額サービス料もかかりません。また、契約期間満了後は、太陽光発電設備が無償で譲渡されます。さらに、電気式給湯機「おひさまエコキュート」を併用することで、太陽光発電の自家消費を促進し、お客さまが電力会社から買う電気を減らすことで、昨今の燃料価格高騰の影響に伴う電気代・ガス代の上昇を抑制できます。万が一、災害が発生した場合においても、太陽光発電設備が発電される時間帯には、電気を継続して使用することができ、おひさまエコキュートに貯めたお湯は、生活用水として使用できるため、より安心な暮らしが実現できます。
6-3)再生可能エネルギーの利用
当社グループ事業である野村不動産ホテルズが運営する「ノーガホテル」全店、グループ会社UHMが運営する「庭のホテル」、野村不動産株式会社が開発するサービス特化型商業施設の「MEFULL(ミーフル)」の全調達電力について、小売電気事業者である関連会社(NFパワーサービス)が提供する「CO2ゼロプラン」を活用し、実質的に再生可能エネルギー100%を実現しており、その他ビル分も併せて、2022年度は計6,882万KWhの再エネを導入しています。また、日本橋室町野村ビルにおいては、グリーン電力を年間100万Kwh購入しています。
7)芝浦一丁目プロジェクトにおける取り組み
芝浦一丁目プロジェクトとは、東京都港区におけるオフィス・商業・ホテル等の大規模複合施設の段階的な建替プロジェクトであり、国家戦略特区として認定を受けています。
同プロジェクトは、健康で快適なまちの創造をテーマに、次世代のテナントビルのあるべき姿とCO2削減の両立に向けて、ウェルネスオフィスの実現、各種省エネ対策による ZEB Oriented の達成を図るとともに、将来的には再生可能エネルギー由来電力等の導入によって、カーボンニュートラルの実現を目指しています。この計画が評価され、同プロジェクトは国土交通省・令和3年度サステナブル建築物等先導事業(省 CO2先導型)に採択されています。
サステナビリティ
- 環境(気候変動と自然環境)
- 社会(社会と社員)
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