バリアフリー&クオリティ オブ ライフ ガイドブック

※この記事は、2014年に作成しました。

野村不動産では、お客さまの多様なニーズに応えるためのサービスとして、「オーダーメイドマンション事業」を2000年より開始し、これまでに約200棟、3000戸超の供給を行っています。
今回、明治大学理工学部の園田研究室との産学協同研究により、これまで携わった「オーダーメイド」の事例の中から、高齢者や車いす利用者、視覚・聴覚障がい者に対応した事例を分析し、『バリアフリー&クオリティ オブ ライフ ガイドブック』を作成しました。
高齢者やハンディキャップをお持ちの方のための住宅を設計する上で大切なのは、ケアの必要な方だけでなく、それをサポートするご家族にとっても居心地の良い空間にすることです。この視点を踏まえ、「6タイプの空間構成」と、ハンディキャップの状況に応じて選択される「22種の設計ポイント」を整理しました。
なお、当ガイドブックの内容は、ハンディキャップをお持ちの方とそのご家族のための住宅の設計に広く役立てていただくと同時に、超高齢社会における住まいや暮らしのあり方を再考するきっかけになることを願い、一般に公開していく予定です。

6タイプの空間構成

①家族やゲストが集うリビング・ダイニング
②家族が一緒に眠れる広いベッドルーム
③適度な距離感・互いの存在を感じる居室
④使いやすいオープンな洗面脱衣室
⑤暮らしやすさにつながるシンプルな動線
⑥無駄なく使えるシンプルな空間形状

22種の設計ポイント

①車いす置き場
②廊下幅の調整
③開き戸を引き戸に変更
④建具幅の拡大
⑤空間の一体感
⑥システムキッチンの高さ
⑦システムキッチンの形状
⑧IHクッキングヒーター
⑨キッチンの形状・広さ
⑩洗面化粧台の形状
⑪トイレの広さ

⑫便器の配置
⑬トイレの収納
⑭収納の形状・大きさ
⑮滑りにくい床材
⑯手すりの設置
⑰スイッチの形状や高さ
⑱インターホン連動ライト
⑲壁・扉の位置変更
⑳バスタブの配置
?巾木(はばき)の素材
?配色への配慮

ステークホルダーのコメント

新たに居住された方々と共に活気あるコミュニティづくりに取り組みます。

私は高齢者やハンディキャップを持つ方の住宅の研究に携わっています。それに際して、こうした方々に何か特別なニーズがあり、特別なデザインが必要と考えるのではなく、あくまで住む人それぞれが持つ「個性」の一つであるという捉え方をしています。
この社会には0歳から100歳以上の方がいて、家族形態もさまざまで、生活スタイルの好みも異なります。たまたまその中に、介助が必要な方や障がいを持っている方もいるということです。
ただ、高齢者やハンディキャップをお持ちの方は、より多くの時間を自宅で過ごし、住まいが生活の中心です。ですから、単に段差がないとか手すりをつけるなどの目に見えるバリアフリーだけでなく、光・音・熱・空気といった目にみえない環境条件も重要です。また、これらの点にとても敏感です。
今回、野村不動産のオーダーメイド事例の検証・分析をすることによって、介助が必要な方とそのご家族に、まさに「個性」としてどのような要望があるか、またそれにデザインとしてきめ細かくどう応えるかをガイドブック的にまとめました。
住まいは、入居当初の生活だけでなく5年後10年後のライフスタイルや家族構成まで構想しておく必要があります。また、単に室内での動きやすさや介助のしやすさといった機能的な問題解決だけでなく、楽しんで生活できることが第一です。またやすらぎや癒しも求められます。
今後はこうした多様な「個性」に対する取り組みがさらに広がり、住宅だけでなく、オフィス環境や公共スペースなどでも活用できることを期待しています。

明治大学
理工学部教授
園田 眞理子氏

サステナビリティ