第三者意見(サステナビリティレポート2021)

関 正雄 氏

明治大学特任教授
関 正雄 氏

全体を通じて、昨年度以降新たに取り組みを広げたり、深めたりした内容とそのプロセスがよく伝わってくるレポートになっています。前年の意見書で指摘した事項をしっかりと受け止めて対応していただいており、着実に進化していることが読み取れます。

1. 高く評価すべき点

  • サステナビリティ委員長をグループCEOが務める体制としたこと。文字通りトップ自らがコミットし、経営にとっての重要性や具体的な取り組み、今後のチャレンジについて自らの言葉で語っていること。
  • レポート冒頭で取り組みの重要な柱を記述する「野村不動産グループのサステナビリティ」において、「ステークホルダーとの対話」の項目を新たに設けて基本方針を示し、SDGsへの貢献のためにステークホルダー・エンゲージメントに力を入れていくことを表明していること。
  • 2021年7月に「野村不動産グループ人権方針」を新たに策定したこと。その中で、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づくことや、人権デューディリジェンスを実践し救済手段の実効性を高め、ビジネスパートナーに協力を要請するなど、グローバルなステークホルダーの関心事項への取り組みを表明していること。
  • 科学的知見に基づいて脱炭素社会実現への取り組みを加速し、自社の戦略やリスクシナリオの開示に取り組んでいること。具体的には、2020年11月にSBTの認証を取得し、またTCFDへの対応を特集記事として扱って、4つのカテゴリーに分けたリスク面を中心に詳細に開示していること。
  • サステナブル・リンク・ローンやサステナビリティ・ボンドの発行など、サステナブル・ファイナンスの面でも積極的に取り組んでいること。現在、金融機関もポジティブインパクトに着目した取り組みを始めているので、連携してさらなる取り組みを行うよう期待する。

2. 今後のさらなる取り組みに向けての推奨事項

  • ステークホルダー・エンゲージメントについては、何について誰と対話するのか、より戦略的な対話へと高めていって欲しい。たとえば、気候変動、生物多様性、人権・労働などサステナビリティの各分野で専門性の高いNGOなどとも対話の機会を持つことを推奨する。今後の戦略構築や重点取り組み事項の特定、具体的なアクションなどに関するヒントが得られる。
  • 策定した人権方針に基づく、今後の実施計画を着実に進めて欲しい。なかでも、人権デューディリジェンスの実施と情報開示が重要。抽出モニタリングで第一歩を踏み出したサプライヤーとのエンゲージメント推進も、その一環に組み込んでさらなる取り組みを期待する。人権デューディリジェンスの具体的実施方法については、2021年12月の改定で大幅に充実が図られた経団連の「企業行動憲章実行の手引き」「人権を尊重する経営のためのハンドブック」の活用を推奨する。また、1社だけで解決できない共通の課題については、業界内での共同検討も有効。
  • TCFDに基づく情報開示では、SBTの考えに沿った超長期の目標を設定することと、リスクだけでなくビジネス機会の観点からの戦略シナリオの開示を充実させて欲しい。また、2030年までに生物多様性を回復軌道にのせることが国際合意となってきている。TNFDも既に発足しており、サプライヤーへの働きかけも含め、この面でも自社として何ができるかを考えて取り組んで欲しい。
  • サステナビリティへの取り組みを全部門で行うには、社員研修のあり方も重要。例えば、階層別研修にサステナビリティを組み込むなど、充実が望まれる。また、人権研修は現在「同和・ダイバーシティ・ハラスメント」が中心テーマとなっており、より視点を広げた研修内容にしていく必要がある。

3. おわりに

トップメッセージにあるように、挑戦者のスピリットを大切にしつつ、さらなる前進を目指していただきたいと思います。この分野は日進月歩であり、今後もグローバルな潮流もよく見て、先取りして動かれることを期待します。体として、昨年度以降の改善努力やその具体的成果が伝わってくるレポートになっています。昨年の意見書での指摘や推奨事項にもしっかりと対応していただいており、企業として向上心をもって真摯に取り組んでいることが読み取れます。

サステナビリティレポート 第三者意見を受けて

当社グループでは、2019年度から継続して関先生より当社グループのサステナビリティ推進についてご意見を頂戴しており、深く感謝いたします。

2021年4月より、私がグループCEOとサステナビリティ委員長を兼務することにしました。これは、企業経営そのものである重要な位置づけとして、スピード感を持ってサステナビリティ推進をしていくという意思の表れです。

環境面においては、昨年SBT認定の取得、TCFDへの賛同表明をいたしましたが、更に取り組みを加速させるため新たにRE100へ加盟をいたしました。ご指摘頂いた通り、脱炭素の取り組みは、リスクだけでなく、ビジネス機会と捉えることも出来ます。RE100加盟に伴い、今後はビジネスとして再生可能エネルギーをどのように活用していくのかの検討を本格化させてまいります。また、昨年度より森林・木材利用の在り方の検討を進めておりますが、この取り組みは脱炭素のみならず、生物多様性にも寄与するような取り組みとなるように検討しております。

一方、社会面においては、今年「野村不動産グループ人権方針」を策定・公表いたしました。現在は本方針がより実効性のあるものとすべく人権デューディリジェンス体制の構築を図っており、来期以降には本格的に実施していく予定です。また、サプライヤーエンゲージメント強化の一環として、調達ガイドラインのモニタリングについても今期本格実施いたします。当社グループは様々なステークホルダーに支えられているという自覚のもと、今後エンゲージメントを更に強化してまいります。

今秋には、当社グループのサステナビリティの方向性を示すものとしてサステナビリティポリシー「Earth Pride 地球を、つなぐ」を策定しました。このポリシーは永続的な企業成長と持続可能な社会の実現の両立を目指しており、当社グループの経営や事業活動そのものに確りと組み込んでいくものです。脱炭素・人権問題など、当社グループでも様々な取り組みを推進していますが、我々のサステナビリティ推進の目的とゴールを明確に持ち、来年発表予定の新たな中長期経営計画の中でグループの持続的な成長に繋げていきたいと考えております。

最後に、当社グループは、今回頂いた第三者意見を参考に、引き続きステークホルダーとの対話を重ねながらサステナビリティの取り組みを強化し、社会とお客さまに向けて新たな価値を提供してまいります。

野村不動産ホールディングス株式会社
代表取締役社長
グループCEO
サステナビリティ委員長
沓掛 英二

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