サステナビリティ委員長メッセージ

野村不動産ホールディングス株式会社
代表取締役副社長
グループ COO

宮嶋 誠一
※2021年3月末時点

私は2016年に当社グループのCSR委員会(2020年4月よりサステナビリティ委員会)の委員長に就き、翌年にはグループ全体の業務執行を担うグループCOOに就任しました。私が業務執行とサステナビリティの責任を兼ねていることは、当社グループが取り組むすべての事業がサステナビリティと一体であり、事業活動を通じて社会課題を解決しながら持続可能な社会の実現に貢献し、企業として成長していくというメッセージを社内外に示す意味があると考えています。
当社グループは、不動産開発と不動産関連サービスを提供する企業として、大きな社会的責任を負っています。企業として収益性を重視するのは当然のことですが、社会に向けた価値提供を続け企業価値を向上させるためには、短期的な収益にこだわらず、数十年先も価値が色褪せない開発を行うこと、さらに街の価値の維持向上に必要な不動産関連サービスの提供を続けることが重要です。永続的に街の価値を高めていくことが当社グループの基本スタンスです。
長い目で見れば、こうした考え方が当社グループへの信頼やブランド力につながり、その結果として、事業リスクの低減や新たな事業機会と収益の獲得に結び付きます。このことは、長く不動産開発事業に携わってきた私自身が身をもって経験しています。
当社グループが取り組む不動産業は、建物の完成まで、また完成の後も街づくりに長い年月を要します。住み、働き、集い、憩う、といった暮らしや時を豊かにするために、いつまでも「住み続けられる街づくり」を実現することが、当社グループにとって重要な課題です。SDGsにもある「住み続けられる街づくり」とは、誰にでも優しく、環境に優しい、そして災害にも強い安全・快適な街づくりです。高品質な不動産の開発と不動産関連サービスを通じて、社会とお客さまに向けさまざまな価値提供を続け、企業価値を高めていきます。

サステナビリティへの取り組み

企業には、短期的な利益の追求だけでなく、パリ協定やSDGs などが掲げる持続可能な社会に向けて、環境をはじめ人権や労働などさまざまな社会課題の解決に取り組むことが求められています。責任投資原則の投資プロセスにESG課題が組み込まれるなど、ESGを指標とした投資も拡大しています。持続可能な社会の実現に向けさまざまな社会課題を解決し、将来世代への責任を果たしていかなければなりません。
これらの社会課題は当社グループが事業を継続するにあたってのリスクとなるものですが、事業に及ぼす影響を正しく把握し対処することで、リスクを軽減するだけでなく新たな事業機会へとつなげていくことができます。また、当社グループが行っている事業活動、価値創造を通じた社会課題への取り組みを迅速かつ適切にお伝えしご理解いただくためにも、各種認証取得と情報開示、またステークホルダーの皆さまとの対話やエンゲージメントをさらに強化していかなければならないと考えています。
サステナビリティへの取り組みについては現在から将来にわたる社会課題を抽出し、「安心・安全」「環境」「コミュニティ」「健康・快適」を4つの重点テーマとして推進しています。すでに各重点テーマおよびさらに具体的な重点課題における目標を策定し推進しています。今後はさらにサステナブル経営の推進をグループ全体の事業戦略に統合し、30年後・50年後の社会、言い換えれば次の世代のために、当社グループがどのような価値を提供し、いかに責任を果たすのか、また私たちは将来どのような企業でありたいのかを示しながら、中長期的な視野でより高い目的意識をもって事業を展開していきます。また、グループ各部門では、日々の事業活動を通じ、「未来につながる街づくり」と「豊かな時の育み」を実現するプロセスにおいて、よりビジネス活動に即したサステナビリティを追求しています。
なお、当社のCSR(企業の社会的責任)の果たす方向を、環境をはじめ、人々の労働・人権まで含めた「持続可能な社会の実現」に向け、グループを横断して、より事業と連携させたサステナビリティへの取り組みを強化しています。2020年4月にはサステナビリティ推進部を新設し、取締役会とサステナビリティ委員会、事業部門との連携を強化し、よりスピード感をもって推進する体制を整えました。当社グループの役員報酬制度においても、各役員が所管するビジネスフィールドにおけるサステナビリティの目標達成度を評価基準に組み入れています。
特に喫緊の課題である気候変動への対策として、CO2排出量を2013年度比で2030年までに30%削減することをグループ目標・非財務KPIとして定めていますが、今期はさらに、気候変動と人権問題に注力します。
また2019年には国連グローバル・コンパクトに署名し、持続可能な社会の実現に向けて環境・人権・労働問題などの社会課題の解決にコミットしたほか、業界共通の重点課題である外国人技能実習生や木材調達に関わる現地住民の問題について、サプライヤーと連携して取り組みました。サプライヤーの皆さまとの協働と信頼関係は当社グループの事業継続の根幹であるため、今後は「CSR調達ガイドライン」の運用充実とエンゲージメントの強化に取り組んでいきます。

更なる深化に向けた取り組み

安心・安全

安心・安全においては、昨今の異常気象や災害の激甚化などを鑑み、設計・施工時から運営・管理時にいたるまで様々な取り組みを推進しています。現在開発を進めている住宅・商業・学校が一体となった大型複合開発「KAMEIDO PROJECT」においては、免震構造の採用の他、新築時の高耐久性部材・工法の採用や大規模修繕「re:Premium」の導入により、大規模修繕の長期化を図る「アトラクティブ30」を採用しております。これは、居住者に対して建物維持管理やライフサイクルコストの負担を軽減し、長期的な安心・安全につながるものです。また、非常時に備え、防潮板の設置や防潮シートを備品装備するほか、ガス・コジェネレーションシステムを活用するなど、街全体のレジリエンスを高める取り組みも推進しています。

環境

気候変動に関しては、従前より策定していたスコープ1・2におけるCO2削減目標を、スコープ3まで範囲を広げ、さらに「2050年ゼロエミッション」に向けて中長期目標を更新し、SBT認定の取得を目指します。当社グループは、事業に占める不動産売却の割合が高いため、保有資産のみならず、売却後の不動産に対する責任も重大であると認識しています。ZEHの取り組みや再生エネルギーの活用などをさらに強化し、開発段階での対策だけはなく、売却後も含めた長期的な視点で取り組んでいきます。併せて、「気候変動のリスクと機会」を評価・分析し、事業リスクの低減、事業機会の獲得につなげるストーリーを明確にお示しするために、2020年7月には資産運用部門において、J-REITをはじめとする不動産ファンドの運用を行う野村不動産投資顧問が、同年9月には当社自身がTCFD提言への賛同表明を行いました。

コミュニティ

コミュニティに関しては、街への愛着や誇りをシビックプライドの醸成につなげる「BE UNITED構想」のもと、この構想を実現するために地域・エリア全体のコミュニティ活性化を目指した街づくりの活動を「ACTO(アクト)」と名付けました。街の扉を開き、街の内外の多様なコミュニティを拡げていきます。第1弾としてプラウドシティ日吉に導入し、今年の7月に施設運営を開始しました。また「KAMEIDO PROJECT」などにおいても導入しており、順次「ACTO」の拡大を図っていきます。「ACTO」においてはお住まいになる方々と地域の皆さまが、ともに街に愛着をもって地域課題を解決しながら街を活性化し、永続的に価値を高め成長する街づくりのために、地域の様々な方々との連携強化を図ってまいります。

健康・快適

住まいにおいて健康と快適はたいへん重要な課題です。大型複合開発「KAMEIDO PROJECT」などの複数物件で新たに次世代の空調システム「床快full (ゆかいふる)」を導入しました。同システムは、マンションの二重床を利用した住戸ごとのセントラル空調で、24時間365日、廊下やトイレも含めた居住空間全体を常に適温に保つ商品であり、部屋に移動しても温度の変化が生じにくく、常に快適な空間を実現するものです。また、「長く健康であり人生を謳歌する住まい」を目指すサービス付き高齢者向け住宅「オウカス」が提供するシニアのための運動プログラムは、昨年グッドデザイン賞を受賞するなど、その取り組みは高い評価を頂いております。オフィスビルにおいては、建物利用者の健康性・快適性の維持・増進を支援する為の制度である「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」の取得を方針とし、光環境・空気環境に配慮し、またリフレッシュスペースの確保やシャワー設備の導入など、健康・快適をより向上する取り組みを引き続き推進してまいります。

新型コロナウイルス感染症への対応について

グループ全体で新型コロナウイルス感染症への対応に取り組んでいます。当社グループの役職員ならびに、お客さまやテナントさま、お取引先なども含め、安全と健康の確保を最優先としています。国の緊急事態宣言および都道府県の自粛要請が発出された期間においては、運営するスポーツクラブ「メガロス」の休業、当社グループが販売するすべての分譲住宅のモデルルームや「野村の仲介+(PLUS)」店舗の一斉休業などの対応を実施しました。かねてより当社グループは「ウェルネス経営」を掲げており、社員の健康と安全を第一としテレワークや在宅勤務、時短勤務など多様な働き方を取り入れ、活き活きと働ける環境整備に取り組んできました。今後もウィズコロナ、アフターコロナを見据えて、安心・快適で生産性を高める新しい働き方を発展させていきます。

今後のさらなる成長に向けて

当社グループは、高品質な不動産の開発と不動産関連サービスの提供を通じて常にお客さまとのつながりを大切にし、「未来につながる街づくりと」と「豊かな時の育み」の実現に向け、新たな価値創造を続け企業価値と競争力を高めていきます。そして、総合不動産グループとして常に30年後、50年後を見据え、社会の一員として社会と共に成長し、持続可能な社会の実現に貢献するサステナブルな企業でありたいと考えています。今後も、お客さま、お取引先さま、社員、そして未来の社会に向け、ステークホルダーの皆さまの期待と信頼にお応えしてまいります。