CSR委員長メッセージ

野村不動産ホールディングス株式会社
代表取締役副社長
グループ COO

宮嶋 誠一

CSR/ESG の推進を通じた持続的成長を目指す

2019年4月に発表した新中長期経営計画(以下、新中計)では、4つの価値創造のテーマについて謳っています。当社グループが独自の強みを活かし、社会とお客様に向けてどのような価値を提供し続けていくか、その羅針盤となるテーマです。
 まず日本を見てみると、人口減少・少子高齢化や労働人口減少といった社会構造の大きな変化から、ライフスタイル・ワークスタイルや、価値観は急速に多様化しています。また、世界的に見ても地球温暖化や自然災害の発生といった気候変動に関連する問題のほか、人権や労働問題などさまざまな社会課題が存在します。パリ協定やSDGsなどの国際的コンセンサスや、資本市場における ESG 投資の拡大といった動きは、そうした社会課題に対する世界的な関心の高まりを示しています。
 こうした状況下において、CSR/ESGの取り組みを通じて社会課題を解決し、同時にお客様のニーズにお応えすることは企業が持続的成長を遂げる上で不可欠であることは言うまでもありません。
社会やお客様が求めるニーズに対し、新たな価値を創造することが、新しい技術や事業機会を獲得することになり、さらには事業リスクの低減にもつながると考えます。
 具体的には、例えば、サプライヤーと協働した活動を進めることで、人権・貧困といった社会課題の解決に寄与するとともに、サプライチェーン全体の事業継続リスクを低減します。また、温室効果ガス削減への取り組みがグローバルに加速する中で、脱炭素やゼロエネルギーの住宅・ビルが立案されるなど、新しい技術や事業を開発する機会が生まれており、今後の新たな社会価値・顧客価値の創造につながると考えます。このように、CSR/ESG活動にしっかり取り組むことにより、持続可能な社会への意識・感度を高め、より付加価値の高い商品とサービスを生み出していきたいと考えています。

新中長期経営計画 価値創造のテーマ
1豊かなライフスタイル・ワークスタイルの実現
2「利便性」「快適性」「安心・安全」に優れた多機能な街づくり
3地球環境・地域社会の未来を見据えた街づくりとコミュニティ形成
4良質な商品・サービスのグローバル展開

新中長期経営計画における価値創造のテーマ

当社グループは、約60年の歴史の中で、住まいを中心とした多くの街づくりを通じて、各時代における社会課題に真摯に向き合ってきました。創業の時代は住宅難の解決に向けた宅地造成を手掛け、近年では「プラウド」「オハナ」といったマンションブランドでさまざまな住まいのニーズに応えてきました。また、駅前再開発や都市型コンパクトタウンを通じた多機能で利便性の高い街づくりを推進することや、老朽化したビルを環境性能が高く安心・快適なビルへと建て替える収益不動産事業の拡大など、お客さまと社会のニーズに応えながら、持続的成長を果たしてきました。
 その一方、「住まい方」「働き方」は、ここ数年で大きな変化を遂げています。高齢社会の進展、共働き世帯の増加などにより、お客さまの志向や価値観の変化に加え、ワークライフバランスも大きく変わりつつあります。さらに、テクノロジーの加速度的進化により、IoTやAIを活用した利便性の高いサービスが提供されるなど、社会構造が大きく変化しています。それに加え、環境やCSR/ESGに関する社会や資本市場からの期待・要望はますます高まりを見せています。
 このような状況の下、新計画策定にあたり、事業を取り巻く機会や脅威を整理し、今一度当社の強みを活かし将来に向けて社会とお客さまに向けてどのような価値提供を続けていくかといった議論を重ねてきました。安心・快適なものづくりと、「住まい」、「働き」、「集い」、「憩う」人々の豊かな時の育みを実現することが、当社が事業を通じて社会的責任を果たし、収益の成長とともに企業として持続的成長を果たすこととなります。そのために、当社グループが担うべき役割・目指す姿を表明したのが新計画の4つの価値創造テーマです。この4つのテーマは、社会課題の解決とともにSDGsにおける開発目標にも合致し、この価値創造の実現が、当社グループの持続的成長に必要不可欠であると捉えています。
 その実現に向け、当社独自の新たな取り組みを加速しており、力強い手応えも感じています。

未来に提供していく価値

2019年3月期は、CSR/ESG活動を一層加速させた1年となりました。ここで、その実績についてお伝えします。
 まず、国連グローバル・コンパクトに署名しました。社会の一員として持続可能な社会に貢献する決意の表明であり、グローバルなステークホルダーに企業姿勢を示すものです。次に、環境に関する取り組みとして、2030年に温室効果ガスを2013年比で30%削減する目標と、自社領域(スコープ1、2)のアクションプランを設定しました。今後、2050 年に向けたより長期的な目標と、顧客・取引先の領域(スコープ 3)のアクションプランの検討も進めていきます。具体的には、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など低炭素・脱炭素型の商品・サービスの開発を進めていきたいと思います。3 つ目は、取引先・パートナーに関する取り組みです。2018年11月より運用を開始した「野村不動産グループCSR調達ガイドライン」に則った事業活動については、取引先・パートナーの協力を得ながらサプライチェーン全体を持続可能なものとします。
 また、情報開示の拡充にも取り組みました。CSR/ESGについて当社のポジションをできる限り定量把握することに加え、ホームページなどを通じてこれまで行ってきた活動を社内外のステークホルダーに幅広く丁寧に開示しています。従業員へのさらなる浸透と、投資家を含めた社外とのコミュニケーションをしっかり実施していきます。このほか、部門・グループ会社ごとに CSR/ESG を推進する具体的な目標も設定し、CSR/ESGがすべての事業活動の基盤として経営トップから現場まで意識して取り組む風土を醸成してきました。
 職住近接の街づくりや行政が主導するコンパクトシティが推進される中、安心・快適で利便性の高い多機能な街づくりのニーズはますます高まっており、今後も当社がお客さまに選ばれ続けるためには、さらなる付加価値の提供と、差別化に向けた取り組みが重要となります。その取り組みの一つが、「ふなばし森のシティ」での経験を発展させた「BE UNITED構想」です。「街を開くことで始まる地域共創型の街づくり」をコンセプトに、マンションの居住者だけではなく、地域周辺の皆さままで巻き込んで、多種多様なプレイヤーにより、街の内外の連携基盤を有する街づくりを目指します。
 さらにその「BE UNITED 構想」を実現するための手段であるコミュニティ活動「ACTO」も開始しました。これは「ACT」と、誰にでも扉が開かれた場所「開く扉(あくとびら)」を意味し、これまで外部には閉じられていたマンション共用部の床を、野村不動産が保有し、エリアマネジメント組織に無償で貸与することで、街にオープンで、かつサスティナブルな「まちの共用部」をつくりだします。エリアマネジメントの企画運営を行うスタッフとして、野村不動産の社員を配置し、コミュニティ活動・イベント情報の発信や、交流・マッチングの基盤となる「街サイト」を開設することで、バーチャルな交流環境も整備します。

Scope:企業による CO2 排出量の算定・報告の対象範囲
Scope 1:燃料の燃焼などの直接排出量
Scope 2:自社で購入した電気・熱の使用に伴う間接排出量
Scope 3:Scope 1・2 以外の間接排出量。販売した製品の使用、廃棄物、従業員の通勤や出張など

最後に

当社グループは、新たな価値創造により企業としての価値と競争力を高め、さらに新たな事業機会を獲得しながら成長につなげる好循環を生み出そうとしており、その確かな手応えを感じています。繰り返しとなりますが、ここ数年、世界的にもCSR/ESGの取り組みは加速しています。企業の論理だけでは持続的成長を果たすことはできません。30年後、50年後を見据え、社会と協調して企業が成長していくことこそ、当社グループが目指すべき価値創造です。あらゆるステークホルダーのためにその責任を果たし、CSR/ESG の側面でもリーディングカンパニーを目指します。新計画での4つの価値創造のテーマや具体的な事業活動の事例は、当社グループの歴史や強みに加え、社内だけでなく社外取締役の知見も取り入れ、またこれまで注力してきたCSR/ESG活動の実績も踏まえて、生まれてきたものです。
 将来にわたって、社会が求める社会価値・顧客価値を提供し、事業リスクの低減、および収益成長を通じて、企業価値の向上につなげる。その活動を適切に情報開示することで、顧客・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆さまと、一層対話を深める。こうした活動を通じて事業を広げ、当社グループの持続的成長を実現していきます。