CSR第三者意見

上智大学経済学部教授
上妻 義直 氏

上智大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得後、名古屋工業大学助手、オランダ・リンパーク研究所客員研究員、静岡県立大学助教授、上智大学経済学部助教授を経て現在に至る。環境省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、内閣府、日本公認会計士協会等のCSR・環境関係の審議会、検討会・研究会等で座長・委員等を歴任。専門は非財務報告論、環境会計論。日本社会関連会計学会副会長。主編著に『CO2を見える化するカーボンラベル』(中央経済社)、『環境報告書の保証』(同文舘)がある。

1. 持続可能な街づくり

野村不動産グループは、2015年11月に新たな中期経営計画を策定する際、将来ビジョンを「当社グループが目指す姿」としてまとめていました。しかし、今年度の報告書では、それが「私たちの約束」に変わり、同社グループの「企業理念」「CSRビジョン」を表すものとして、明確に位置付けられるようになりました。

「私たちの約束」は、「未来(あした)につながる街づくり」と「豊かな時の育み」が基本的な目標ですが、それらの実現を通じて、社会的課題を解決すると共に、社会に向けて新たな価値を創造し続けることを目指しています。実際に、その考え方は、デベロップメント事業において様々な「こだわり」に反映されており、総合不動産グループならではのシナジーに支えられて、社会変化に適合できる持続可能な街づくりに結実しているのです。

そうした「こだわり」の一つに「都市型コンパクトタウン」があります。それは、これからの少子高齢化社会に向けて、安全で快適な住宅を提供するだけでなく、徒歩圏内にオフィス、商業施設、病院・学校等の都市機能をコンパクトに集約して、あらゆる世代が共存してコミュニティを育める街づくりを目指す、というコンセプトです。これが、地域社会と連携しながら永続的に街の価値を高め、その結果として企業価値も高まるという、きわめてCSV的な理念に溢れたビジネスモデルである点を高く評価したいと思います。

2. 環境認証の付いた物件群

もう一つの「こだわり」は販売物件に環境認証の取得を促進していることです。多くのオフィスビル等で、建物の総合的な環境性能の高さを示すCASBEE認証Aランクを取得しており、同時に日本政策投資銀行のGreen Building認証を取得した物件も複数存在します。また、気候変動対策に優れた建築物の証である、東京都環境保護条例の「トップレベル事業所」認定を受けた物件も見られます。

秀逸なのは、環境性能の中でも生物多様性保全に配慮したオフィスビル・商業施設・集合住宅等に付与される「いきもの共生事業所®」認証を取得した物件が4件もあることで、販売物件に持続可能な社会へのパスポートを付与しようとする野村不動産グループの「こだわり」に、思わず心の中で拍手してしまいます。

3. 今後の課題

早急に対応が望まれる課題は、全社的なCSRマネジメント体制の確立です。事業活動に伴う環境的・社会的影響の評価と、それらの是正対策を、グループベースで適切に展開できるような体制作りが必要で、そこにはサプライチェーンも含めなければなりません。また、定量的データを含む基本的な環境・社会情報の開示は、健全なCSRマネジメントにとって不可欠な要因であることも、忘れてはなりません。それらが社会的なモニタリングに耐えられるような枠組み作りを通じて、野村不動産グループのCSRマネジメントがさらに有効性を高められるようになることを期待します。

※CSV:Creating Shared Value(共有価値の創造)の略。ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱した概念で、企業が社会的ニーズに対応する事業活動を通じて経済的価値を創造するとともに、社会的価値も創造するという考え方

第三者意見を受けて

上妻先⽣には、当社グループのCSR活動を持続的に発展させていく上で必要な取り組みについて、的確なご意⾒、ご指摘をいただき、誠にありがとうございます。

当社グループでは今年度、「企業理念」「CSRビジョン」として「私たちの約束」を策定しました。これは、「未来(あした)につながる街づくり」と「豊かな時の育み」の実現を目指し、あわせてCSRを推進するためのものです。
今後は、この「私たちの約束」を継続的に果たすため、ご指摘いただきました、全社的なCSR体制づくりを重点的に推進してまいる所存です。

当社グループでは引き続き、ステークホルダーの皆さまの期待と信頼にお応えし、さらなる企業価値の向上と持続可能な社会の実現につながるCSR経営の実践に努めてまいります。

野村不動産ホールディングス株式会社
代表取締役副社長 兼 副社長執行役員、グループCOO
CSR委員会委員長
野村不動産株式会社 代表取締役社長
宮嶋 誠一