CSR第三者意見

上智大学名誉教授
上妻 義直 氏

上智大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得後、名古屋工業大学助手、オランダ・リンパーク研究所客員研究員、静岡県立大学助教授、上智大学経済学部助教授、同教授を経て現在に至る。環境省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、内閣府、日本公認会計士協会等のCSR・環境関係の審議会、検討会・研究会等で座長・委員等を歴任。現在は環境省の環境報告ガイドライン改定検討委員会委員長。専門は会計学、非財務報告論。主編著に『CO2を見える化するカーボンラベル』(中央経済社)、『環境報告書の保証』(同文舘)がある。

1. 社会課題への対応

野村不動産グループでは、CSR重点テーマのひとつに「安心・安全」を選定しており、その中で「長寿命・高耐久化の取り組み」を重点項目に設定しています。
2017年度に開始した「re:Premium」と2018年度に開始した「アトラクティブ30」は共にこの領域の取り組みですが、それらが顧客、社会、野村不動産グループの三者にとって有益になる点で、持続可能な社会の実現に向けたビジネスモデルへの転換姿勢を強く意識させます。
それは、「re:Premium」が竣工済み分譲マンション向け、「アトラクティブ30」が新築分譲マンション向けという違いはあるものの、いずれも大規模修繕の長周期化を図るサービスであり、マンションの老朽化というバリューチェーン下流での社会課題を解決する有効な手段になることが期待されるからです。
これらが推進されると、顧客の心理的・経済的負担が軽減され、資産価値の維持にも役立つだけでなく、SDGsゴールの「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任・つかう責任」に寄与することで、堅固な社会基盤の構築に結実する可能性が高くなります。
また、そのような取り組みは野村不動産グループへの社会的信頼を増大させて、同グループの持続的成長を支えます。よく工夫された取り組みとして、今後の進展が大いに期待されます。

2. サプライチェーンマネジメントの開始

懸案事項であった「CSR調達ガイドライン」が制定され、2018年度からの運用開始が予定されています。
野村不動産グループが展開するビジネスには、サプライチェーンにおける人権リスクが潜在的に高い分野も含まれており、ガイドラインの制定はそれらのリスクマネジメント強化に役立つと考えられます。
また、ガイドラインには不正通報システムが組み込まれているので、サプライヤーの事業現場においても一定の有効性を発揮することが期待されます。当面は質問票への回答でサプライヤーに浸透させる運用になると思いますが、最終的には人権デューディリジェンスの体制整備に発展させることを望みます。

3. ウエルネス経営の推進

2017年度から開始した働き方改革の基本方針として、ウエルネス経営の推進が宣言されています。その中核となる「過重労働の防止」には様々な施策が整備されており、健康で働きやすい職場を作る上で機能することが期待されます。
しかし、そうした改革の途中で企画業務型裁量労働制に関する是正勧告・指導を受けたことは大変残念な事実であり、ウエルネス経営の推進が、そうした事態の再発防止に結びつくことを心から願うばかりです。今後の継続的な対策強化を望みます。

4. 今後の課題

SDGsの貢献実績に目標や基準値がないので、進捗度が分からず、取り組みが本当に貢献なのか判断することができません。また、廃棄物以外の環境データに改善が見られませんが、その説明もありません。さらに、障害者雇用率が経年的に未達成なのも課題です。いずれも今後の改善が望まれる事項です。



第三者意見を受けて

当社グループでは、2014年度から継続して上妻先生より当社グループのCSR推進についてご意見を頂戴しており、深く感謝いたします。

昨年度、「CSR調達基準が明確でない」ことのご指摘を受けまして、2017年度のCSR委員会にて議論を重ね、2018年4月に「野村不動産グループ CSR調達ガイドライン」を制定することができました。人権を含むサプライチェーンマネジメントに取り組んでまいります。

また、同じくご指摘を受けておりました「目標・実績管理に関する情報が不足」している点につきましても、CSR委員会およびCSR推進会議で議論の上、4つの重点テーマと2つの推進基盤ごとに方針と目標を設定し、今年度よりCSRレポートにて開示を開始しました。今後は、PDCAを実施しながら、経営戦略とCSR活動の一体推進を図る所存です。

今回いただいた第三者意見を通じ、顧客、社会、野村不動産グループの三者にとって有益で、且つ持続可能な社会の実現に向けたビジネスモデルへの転換が、ひいては当社グループの持続的成長につながるということを改めて認識いたしました。 そしてこの実現のためにも、社員の心身の健康を大切にし、ウェルネス経営を実効的に推進してまいります。また、今回いただきました課題に関しまして、今年度以降取り組んでまいります。

当社グループは、今後も事業を通じて、社会に向けた新たな価値創造に努めます。

野村不動産ホールディングス株式会社
代表取締役副社長
グループCOO
野村不動産グループCSR委員会委員長
宮嶋 誠一