CSR第三者意見

上智大学経済学部教授
上妻 義直 氏

上智大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得後、名古屋工業大学助手、オランダ・リンパーク研究所客員研究員、静岡県立大学助教授、上智大学経済学部助教授を経て現在に至る。環境省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、内閣府、日本公認会計士協会等のCSR・環境関係の審議会、検討会・研究会等で座長・委員等を歴任。現在は環境省の環境報告ガイドライン改定検討委員会委員長。専門は非財務報告論、環境会計論。主編著に『CO2を見える化するカーボンラベル』(中央経済社)、『環境報告書の保証』(同文舘)がある。

1. 「持続可能な街づくり」への国際的評価

 これまでも販売物件に様々な環境認証を取得してきた野村不動産ですが、今年度はフランス政府の公的認証制度である「エコカルティエ・ラベル」を、フランス国外で初めて取得する快挙を成し遂げました。
このラベルは、持続可能な都市計画アプローチを定めた「エコカルティエ憲章」に準拠する街づくりプロジェクトを対象としており、ラベル表示を認められた「ふなばし森シティ」が、単なる環境的な配慮の水準を超えて、持続可能性に著しくすぐれた開発コンセプトにもとづく住環境であることを証明しています。
3年後に行われる最終審査に向けて、「ふなばし森シティ」の持続可能な街づくりが精力的に進められ、「エコカルティエ・ラベル」もステップ4へと進化することを期待します。

2. 社会面での取り組み成果

今年度は社会面での取り組みにも大きな成果が現れています。
その1つは、女性活躍推進法の行動計画が一定の基準を満たし、女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業について厚生労働大臣が認定する「えるぼし」企業に、野村不動産が選定されたことです。これは、同社の2016年度における人事制度改正において契約社員の無期雇用化が実施されたことと併せて、組織内弱者に対する配慮が経営行動によく反映されていることを意味しています。
また、今年度から定量的な人事関連データが公表されるようになりました。これも、過年度の指摘事項に対する改善として、高く評価したいと思います。

3. 重点テーマの特定方法

従来は明らかでなかったCSR重点テーマの特定方法が今年度から開示されるようになりました。これも評価すべき取り組み成果の1つです。
その特定プロセスにおける重点テーマの選定基準、初期抽出方法、ステークホルダー・エンゲージメントの適用形態はいずれも適切であると考えられます。
しかし、その結果として4つの重点テーマが特定された経緯がよくわかりません。それは、ステークホルダーにとっての重要度を考慮すれば、通常なら重点テーマとなるサプライチェーンでの環境・人権リスク等に言及がなく、不動産事業にとっても重要なCSR調達基準が明確でないからです。この点は今後に検討余地を残しているように思います。

4. 今後の課題

持続可能な社会に適合的な企業であるためには、環境・社会配慮を事業戦略と一体化し、持続可能なビジネスモデルへの転換を進めることが必要です。
野村不動産グループの経営ビジョンはこの方向性を志向していますが、PDCAサイクルの健全性を評価する上で不可欠な目標・実績管理に関する情報が不足し、環境データ等の集計範囲が報告対象組織と異なるために、CSRマネジメントの運用実態が明確ではありません。全社的なCSRマネジメント体制が整備されているなら、その実態開示が求められますし、そうでなければ全社的なCSRマネジメント体制の早期確立が望まれます。



第三者意見を受けて

上妻先生には、当社グループのCSR活動を継続的に発展させていく上で必要な取組みについて、的確なご意見、ご指摘をいただき、誠にありがとうございます。

当社グループは、「企業理念」かつ「CSR活動を推進していく考え方」を「私たちの約束」としてまとめており、経営戦略とCSR活動の一体推進に取組んでおります。今後は、各部門の課題と目標を整理していくと共に、各部門を横断し、グループとしてCSRを統合してマネジメントしていく所存です。
今後は、この「私たちの約束」を継続的に果たすため、ご指摘いただきました、全社的なCSR体制づくりを重点的に推進してまいる所存です。

当社グループでは引き続き、ステークホルダーの皆様の期待と信頼に応えながら、さらなる企業価値と持続可能な社会の実現に向けて、CSR経営の実践に努めてまいります。

野村不動産ホールディングス株式会社
代表取締役副社長 兼 グループCOO
CSR委員会委員長
宮嶋 誠一